新しい需要を生むための提携や買収を強化

 ホンダはGMやLGグループ、あるいは他社との提携をさらに強化するだろう。自動運転技術などの分野で競争力が高いと考えられるソフトウエア開発力を持つスタートアップ企業などの買収や出資戦略も強化するべきだ。

 そう考える一つの要因として、世界全体でグローバル化とは逆の動きが加速している。1990年代以降、世界経済はグローバル化し、海外直接投資の増加によって世界全体で生産コストは低下した。グローバル化を追い風に、本邦自動車メーカーはジャスト・イン・タイムのサプライチェーンを構築して世界の需要に迅速に対応した。

 しかし、2018年以降は米中対立やコロナ禍、ウクライナ危機などが発生し、世界のサプライチェーンは不安定化している。加えて、異常気象問題も深刻である。こうした不確実性の高まる環境下、大型の新規投資を一社単独で実行するのは難しい。リスクを分散して得意な分野に集中するために、業種を超えた提携や買収戦略が強化されている。

 今後の展開としてホンダに期待したいのは、世界をあっと驚かせる商品の創造だ。ホンダは、二輪車の「ホンダカブ」や「CVCCエンジン」(低公害エンジン)などのヒットで成長を遂げてきた。口で言うほど容易なことではないが、アライアンスの強化によって新しい需要創出の力を高めることができるだろう。

 世界的に見て、本邦工作機械メーカーの競争力は高い。また、車載用の半導体分野では、ソニーグループと台湾積体電路製造(TSMC)、デンソーの合弁によって新工場が建設されている。ホンダはソニーグループとも戦略的提携を交わし、新しい需要創出に向けた取り組みを増やしている。

 その一方で、当面の間、世界的に物価は高止まりするだろう。中国では個人消費がさらに減少する恐れが強い。それはホンダにとって逆風だ。世界で先行きへの懸念が高まる中、ホンダはアライアンスや買収戦略を強化して、新しい取り組みをさらに増やさなければならない。その資金を捻出するために、国内の生産拠点の統廃合などが増えるだろう。成長加速に向けたホンダの取り組みは、わが国産業界の活力向上に無視できないプラスの影響を与えるはずだ。