「自分に興味があるはずだ」という思い込み

──最近、「こういう出来事って本当はこうだったんだよ」「私は本当はこういう人間なんだよ」とSNSで暴露する人を見かけることが増えたように思います。本音を知ってほしい、誤解を解きたいと思う人たちは、ひろゆきさんの目にはどううつりますか?

ひろゆき:そういうことをしたがる人って、政治家やタレントが多くて、社会人経験が少ない人が多い気がするんですよね。

 社会人経験があったら、本当の自分を理解してもらうのは無理だってわかってると思うので。会社から「この商品を売ってきてください」って命令されたら、興味がなくて好きじゃなくても売らなきゃいけないじゃないですか。そういう仕事なんだから。

 基本的に、自分を偽って仕事するのは当たり前のことで。「本当の自分を知ってもらおう」だなんて、別に友達じゃないんだから、同僚に対しても思わないじゃないですか。

 でも、社会人経験が少ない人は、世間のみんなに「本当の自分」を知ってもらおう、知りたいと思ってもらえるはずだと思い込んでいる

 友達に「僕はこう思うんだよ」って話したら「あなたはそう考えるんだね」としっかり耳を傾けてもらえますよね。それと同じように、世間の人たちも僕と仲良くしたいし、「僕がどんな人間なのか」を説明したら理解してくれるはずだって信じ込んでるんだと思うんですよね。

──なるほど。他人が興味を持ってくれることを前提に考えている、ということでしょうか。

「他人の目を気にしすぎる人」に共通する、たった1つの特徴「香川さんがなぜセクハラしたのか、どういう心情なのかなんて、どうでもいいじゃないですか」

ひろゆき:そうですね。でも、本当は、世間はメディアに出る人になんの興味もないんですよ。香川照之さんがセクハラしたら「あ~、セクハラする人なのね」で終わりで、香川さんがなぜセクハラしたのか、どういう心情なのかなんて、どうでもいいじゃないですか。

 だから基本的に、「本当の私はこうなんです」と自己主張したがる人って、「誤解されてることを表立って説明すれば理解してもらえる」という思い込みが強いんだと思います。

 一般人には表立って説明する機会がそもそもないので、「誤解されたらしょうがないよね」って割り切って生きてる人が多いと思うんですけど、SNSやメディアを日常的に使って活動してる人は、説明できるツールや発信力を持っているがゆえに、「誤解がとけるかも」と期待してしまうんじゃないかなと。

──「誤解されたくない」という葛藤から、どうしたら逃れられるのでしょうか?

ひろゆき:誤解はとけないものなんだ」という諦めを、いつするかだと思うんですよね。

 誤解や誤読をするのは、情報分析能力が足りていない人なので、「そういう人と距離をとれるのは、僕にとってプラスである」と僕は考えちゃうんですけど。僕のことを嫌って近寄ってこないなら、接点を持たなくていい。無能な人が周りから減ってくれると、僕の時間が増えるので(笑)

──「誤解する人は誤解したままでいいよ」という考え方は、昔からですか?

ひろゆき:そうですね、わりと言いたいことを言ってよく嫌われていたので。

 でも、別に仲の良い友達がいればいいだけで、仲の悪い友達と仲良くする必要なんてないじゃないですか。よくやりとりをするのは学生時代の友達やゲーム友達など少数ですけど、そういう人たちさえ「人間:西村博之」を知ってくれているなら、あとはどうでもいいなーと思っています。

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ひろゆき

本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、シリーズ50万部を突破した『99%はバイアス』『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。

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