SNSの総フォロワー数は300万人を超え、YouTube動画の月間再生数は3億回を超えるなど、現在、日本中で大ブレイク中のひろゆき氏。
彼の最新刊『99%はバイアス』では、「ブレイクの秘訣」を明かし、「どうすれば影響力を持てるのか?」「口のうまい人がトクする世の中で、どう生きるべきか?」などをマジメに語った。
今回は、本書の発売を記念し、特別インタビューを実施。「パワハラ上司に反撃する方法」について、ひろゆき氏に解説してもらった。(取材・構成/川代紗生、撮影/榊智朗)
「パワハラ上司」を生んでしまう職場の特徴
──『99%はバイアス』の中に「『とっさに謝ってしまう自分』のトリセツ」という項目があり、とても参考になりました。とくに職場では、上司に嫌がらせされても「嫌だ」と言えないなど、周りに気を使いすぎて疲れてしまう人も多いと思います。
そこで今回は、「パワハラへの対抗策」をテーマでお話を伺いたいのですが、そもそも、パワハラはどうして発生してしまうのでしょうか。
ひろゆき:「そんなつもりなかったのに、パワハラと受け取られてしまった」というパターンももちろんあるんですけど、基本的には、パワハラは「自分の幅をどんどん広げたい権力者」と「それを止められない権力を持たない者たち」の構造なんですよね。
──自分の幅を広げたい?
ひろゆき:パワハラをするのって本当に強い人じゃなくて、強くないくせに自分は強いし力があると思い込んでいる人なんですよ。
あくまでも「上司」という肩書きが、コミュニティ内では立場的に強いというだけで、その人が本質的に強いわけではない。でも、自分では「俺は強い」と思い込んでいる。そういうタイプの人が、「ポジションが高いから逆らってこないだろう」と思ってどんどん幅をきかせるようになり、命令権の中に通常の業務以外のことも含まれていると勘違いしはじめて。「ちょっとお茶入れて」とか「ゴミ箱たまってるからゴミ捨ててきて」とかまで頼み始めるわけです。
──じわじわ要求が増えるから、部下側も悪い意味で麻痺してしまい、「おかしい」と言えなくなってしまうのでしょうか。
ひろゆき:人はラクをしたい生き物なので、その権力者を許容していたら、ますます要求が増えていきます。「許容しない」という意思を示さないかぎり、権力者が「ラクをしたい」と思える幅をさらに広げてくるので、反撃しないと状況は悪化するだけだと思いますよ。
パワハラされ続ける人の「思考のクセ」
──どうすればパワハラをなくすことができるでしょうか。自分がパワハラをされた場合、どう対抗したらいいですかね?
ひろゆき:「パワハラがないような社会にしよう」という人もいますけど、僕は無理だと思うんですよね。
「やりたいことをやりたい権力者」と「権力がなく拒否できない部下」、パワハラは、この2つが揃えば必ず起きるんです。だから、個別対処でどうにかするしかないわけですが、やっぱり、いちばん大事なのは「ちょっとしたことをふられる」という「舐められポジション」を取らないことだと思います。
──なるほど。舐められポジションを取らない。
ひろゆき:なので、ゴミ箱を蹴ってください(笑)。
──ゴミ箱を蹴る!?
ひろゆき:人って大きい音が鳴った瞬間、身構えてアドレナリンが出るんですよ。つまり、不快な感情が湧いてくるんです。
だから、納得いかない仕事をふられたり、嫌な思いをしたときには、机をバーンと叩くとか、ゴミ箱を蹴るとか、大きい音を出すのがいいと思います。それが続けば、上司は「こいつに命令するたびに不快が返ってくる」と、動物的に学習してくれるので。
上司の中に、「不快の反射」をつくる。そのために、大きな音を立てて嫌がらせをするというのがいいんじゃないかなと思いますけど。
──もうちょっと身近な方法は、何かあるでしょうか。おとなしい人、平凡な人がそれをやると、「急にどうしちゃったの!?」と思われてしまうかなと……。
ひろゆき:うーん……。それでいいんじゃないですかね?「こいつはおとなしいから、どうせ何も反応してこないよね」って舐められてるから強くこられるわけじゃないですか。
──あ、そうか。
ひろゆき:ゴミ箱を蹴って「どうしちゃったの!?」って思われたらよくない、だからもっと身近な方法はないか探そう。だって私はおとなしい人を演じなくてはいけないから──ってことじゃないですか。
反射的に「身近な方法」を求めてしまう、その思考の裏側に、周囲に抱かれている「おとなしい人」のイメージを守らなくてはならない、というバイアスがある気がするんですよ。
──たしかに。気づいてなかったです。ほとんど無意識に話してました。
ひろゆき:その「おとなしい人を演じる」のがそもそも間違いなので、「おとなしいけどキレると何するかわからないやつ」になっておいたほうが、のちのちラクじゃないかなーと。
周りの人をびっくりさせるために「ゴミ箱を蹴りましょう」と言ってるので(笑)、周りの人がびっくりしないことをやろうとしたら、対策にならない。
それができないなら、「業務内容に含まれてないです」とはっきり言うしかないと思いますよ。
不機嫌は「有効なカード」
──「いい人でいなきゃ」というバイアスに無自覚な人は多そうですね。最近、「不機嫌で周りをコントロールしてはいけない」という意見もよく耳にしますが、ひろゆきさんは、どう思いますか? パワハラの防御策としては、ありでしょうか?
ひろゆき:「不機嫌はよくないよね」っていろんなところで言われているのは、結局、不機嫌が「有効なカード」だからなんですよね。
「不機嫌で人を振り回すのはやめましょう」という人は多いですけど、僕は、「他の人が使うんだったら自分も必要な場面で戦略的に使わせてもらいます」くらいの気持ちでいてもいいと思います。
仲の良い、うまくいっているチームで急に不機嫌になるのは、ギクシャクするし損なだけなんですけど、そもそもパワハラ的な行為が横行している環境なら、むしろ自分も「不機嫌のカード」を切ったほうが、パワハラのダメージを避けられる。
──気分屋はよくない、一貫性のある行動をとらなきゃいけないみたいなイメージがあって、一度「不機嫌はよくない」と思ったら、誰に対しても機嫌よく、笑顔でいようとしてしまうのかもしれません。
ひろゆき:「高校デビュー」「大学デビュー」などの言葉は、あたかも恥ずかしいことのように使われてますよね。でも、僕、いる環境によってキャラクターが変わるのは、別に普通だと思うんですよ。
コミュニティでのポジションや肩書き、周りの人によって、どんなキャラクターでいけばラクなのかは全然違う。使い分けるのが当然じゃないですか。
──たしかに。
ひろゆき:自分のキャラクターを守ろうとしすぎないほうがいいと思いますけどね。
職場のような限られたコミュニティで精神的に追いつめられると、視野がどんどん狭くなり、「自分で考え方をコントロールする」ことそのものが難しくなります。嫌々働いて、上司に言われるがままどんなこともやって、それが「やりがい」だと自分で自分をダマして……って、それってすごく奴隷的な働き方だと思うんですよ。
「奴隷の幸せ」を選ぶか、「奴隷じゃない幸せ」を選ぶか、自分の頭で考えられるうちに判断したらいいんじゃないかな、と思いますけどね。