不安や悩みが尽きない。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そこで参考にしたいのが、増刷を重ねて好評多々の感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』(ダイヤモンド社)だ。ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。とても読みやすいオムニバス形式の8つのショートストーリーは、ふと心が落ち込んだとき、そっと心の荷物を手放すための優しい言葉を授けてくれる。voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」の心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日がラクになる!
言葉に表現できない辛さ
精神科医の仕事をしていると、よく遭遇することなのですが、患者さんの本当の辛さというのは、なかなか言葉で表現できないことが多いです。
精神的なストレスや葛藤によって、「喉(のど)に球が詰まっているような違和感がある」と訴える人がいます。これは「ヒステリー球」(咽喉頭異常感症)と呼ばれる症状なのですが、「喉に球が詰まっているような感じで、コンコンと咳(せき)をしたりするんだろうな」くらいに思うかもしれません。
以前、アテクシも精神的なコンディションを崩したことがあったのですが、そのときも似たような症状を経験したんです。その実体験としていえるのは、「喉にボールが詰まっているような違和感」なんていう表現では伝わりません。喉の違和感が気になりっ放しで、他のことが考えられないくらい気持ち悪い感覚に引きずられて頭から離れないんですね。
馬鹿らしいとわかっていてもやめられない
「強迫性障害」という精神疾患があります。これは、自分でもつまらないことだとわかっているのに頭から離れず、何度も同じことを確認したりして、日常生活に支障をきたしてしまう状態をいいます。
たとえば、ガス栓や電気器具のスイッチを切ったか、鍵をかけ忘れていないかを何度も確認したりします。一度確認したから大丈夫だろうと頭ではわかっていても、また不安になって何度も確認してしまう。症状が重くなると、約束に遅刻したり、外出できなくなるといった状態になります。
本人も馬鹿馬鹿しいことはわかっているのに、その意思に反してやめられないのです。鍵をかけ忘れていないかを、何度も何度も玄関まで往復して確認する。本人はもう泣きたいくらいに辛く、生きているのが嫌になるくらいのケースもあるわけです。
経験した本人でないとわからないこと
この症状を言葉にしてみると、「なんでそんなことするんだろう?」「すぐやめられそうなのに」なんて思うかもしれません。やはり本人の辛さというのを表現することは難しいわけです。
患者さんによって症状は異なりますから、たまに気になるくらいの人もいれば、夜も寝れないくらい気になる人もいます。いずれにしても、実際の辛さというのは、実体験した本人でないとわからないということです。
そうした患者さんとお話ししていると、本人の顔色や表情、仕草などに、言葉では表現されない辛さが表れます。ときには感極まって泣き出す患者さんもいます。そうした言葉以外のことを察しながら、お話を聞くわけです。
「謙虚さ」と「想像力」をもって相手に接する
これは精神科医としての診察だけでなく、日常生活にも通じることなんです。本人の辛さは、その本人にしかわからない。そういう謙虚さをもって他人に接することが大切なんですよね。
わかったふりをして「それはこういうことだよね」なんて安易に言いがちですが、本当のところはわからないんです。謙虚さとともに、相手に対する想像力を働かせながら、意見を言うより話を聞くだけで、相手が救われることはあります。
「本当の辛さは本人しかわからない」という謙虚さと相手に対する想像力を働かせてみてくださいね。
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