日野自動車は、二度と不正を起こさないための組織改革や、EV(電気自動車)トラックの普及など、さまざまな“看板”を掲げている。ところが、トラックメーカーと販売店の間では、温度差が広がっているという。EVトラック販売を巡って販売店との間に溝が生まれる状況は、競合トラックメーカーも同様だ。特集『日野“陥落” トラック大異変』(全5回)の最終回では、販売店や物流会社の声を紹介しながら、トラックの製造と販売が歩み寄るための“処方箋”を提示する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
トラックメーカーが「錦の御旗」を掲げるも
販売店との間に温度差が…
2022年10月7日、日野自動車は不正問題への対応に関する記者会見で、「二度と不正を起こさないための『3つの改革』」を掲げた。経営改革、組織風土改革、車造りの構造改革を断行し、「社会的責任を果たす会社に生まれ変わる」ことを目指したものだ。
これ以前から、日野はさまざまな“看板”を掲げてきた。中でも特に力を入れていたのが、EV(電気自動車)の普及だ。日野が打ち出した長期目標『日野環境チャレンジ2050』では、EVなどの次世代車の開発と普及を並行して進めることをうたっている。
EV普及という“看板”を掲げているのは、他のトラックメーカーも同様だ。程度の差こそあれ、いすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バスも次世代車の開発や普及をお題目として据えている。
ところが取材を進めると、次世代車普及の“旗振り役”となるはずの販売店が、電動化・脱炭素の潮流に背を向けている実態が明らかになった。
カーボンニュートラル(炭素中立。温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)という「錦の御旗」に対して冷めた見方をしており、営業現場とメーカーとの間に溝が生じているのだ。
販売の最前線に立つトラックメーカー営業関係者によると、メーカーと販売店の間には「二つの温度差」があるという。
営業現場がグローバルな流れに後ろ向きな姿勢を示すのはなぜなのか。次ページでは、メーカーと販売店の間で広がる「温度差」の正体を明らかにするとともに、両者が歩み寄るための“処方箋”を提示する。