JR九州の収益性回復の
カギを握る鉄道業
最後が、JR九州だ。本州3社に先駆けて2021年度決算で最終黒字に転じていた同社は、今年度上期は約118億円の経常利益、約120億円の最終黒字を計上した。
昨年度上期は約11億円の経常赤字、約20億円の純損失だったが、これは運輸セグメントが約122億円の営業損失を出していたことが大きな要因だ。それが新幹線の鉄道営業収入は対前年度約74億円増の約187億円、定期外在来線は約76億円増の約231億円に回復したことで、運輸セグメントが約4億円の営業黒字をかろうじて達成した。
JR九州の収益源は不動産・ホテルセグメントであり、営業黒字112億円のうちの85億円を同事業で稼ぎ出している。2019年度上期の連結営業利益は約302億円で、その内訳は運輸が約174億円、不動産・ホテルが約101億円と両輪の関係にあった。だが、コロナで運輸業の収益性が大きく低下したことで、足元では不動産・ホテルが一手に担う形となっている。
それゆえに鉄道業の収益性回復が重要になる。今年9月に行ったダイヤ改正では鹿児島本線などで朝・夕ラッシュ時間帯も含めて減便を実施。快速運転の廃止や終電繰り上げも行った。さらにワンマン運転を拡大するなど、鉄道事業の合理化を推進している。
一方、同時に西九州新幹線(武雄温泉~長崎間)が開業。開業から1カ月で約19万8000人が利用し、在来線特急時代の約2.3倍となるなど、新たな鉄道事業の柱が誕生したが、その他の路線のサービス低下や安全性への不安が指摘されている。
上場4社の業績はこうしてコロナ前には及ばないまでも、鉄道事業が黒字に転換したことで底を打った。だが、各社は新しい困難に直面しつつある。ウクライナ戦争や円安を背景としたエネルギー価格の高騰だ。
電気料金や燃料単価の高騰により、今年度上期の動力費はJR東日本が114億円増の355億円(約48%増)、JR西日本が69億円増の260億円(約37%増)となった。また、JR東海は今年度の動力費が約490億円から約630億円に膨らむ見通しで、業績予想の売上高を1兆3320億円で据え置きながらも、営業利益を2900億円から2790億円、純利益を約1460億円から約1410億円に引き下げた。
京浜急行電鉄も11月28日に予定しているダイヤ改正について、「コロナ禍におけるご利用者数の減少および電気料金の高騰に伴う動力費の増加などにより、一部列車においては本数および編成両数を需要にあわせた適正化を図り、運転の取りやめ・時刻変更を行います」と発表しており、影響はJRだけにとどまりそうにない。