タウンコミュニケーション部プロモーション担当の若松慧氏川崎フロンターレの地域貢献活動について話す若松氏。震災復興支援として算数ドリルを贈ったことをきっかけに、今でも岩手県陸前高田市との間で交流が続いているのだそうだ

「1997年のクラブ創設時から、シーズンオフの年末には、青いサンタクロース衣装を着たフロンターレの選手が川崎市内の小児科病棟を訪れて病気と闘う子どもたちにプレゼントを贈る『ブルーサンタ』活動を継続して行っています。また、2007年から川崎市内の全小学校に『川崎フロンターレ算数ドリル』を配布して、地域の教育課題解決にわれわれも取り組ませてもらっています」(若松氏)

 取材したフロンターレ所有のスポーツ施設「フロンタウンさぎぬま」も、地域のスポーツ普及を進める目的で2006年に創設された。フットサル場としての施設利用だけでなく、宮前区役所との連携協定を結び地域の高齢者に向けた健康増進事業も進めている。施設のイベントを企画する浦野氏は、サッカーを知らない高齢者に対してもフロンターレができる地域貢献活動はあると話す。

「宮前区は坂や起伏が多いため、歩くのが困難になる方もいました。そこで、川崎市が起こした転倒予防事業に手を挙げて、フロンタウンさぎぬまでウオーキング教室を開催するなど、地域の高齢者が元気に過ごせるようにお手伝いする活動も進めてきました」(浦野氏)

 フロンタウンさぎぬまでは、ヨガやダンス、エクササイズなど多岐にわたって健康教室を開催している。地域の人々が健康になれるように体を動かす場として機能しているが、フロンターレが運営している施設だと知らずに教室に参加する人もいるのだとか。クラブとしてはスタジアムまで足を運んでもらいたいという思いもあるため、フロンターレとのつながりを感じられるイベントも行っている。

「あるウオーキング教室のメニューで、フロンターレのホームスタジアムである等々力競技場をゴールに設定しました。歩き終わった後、フロンターレの試合観戦をイベントに組み込んだんです。すると、試合の雰囲気に感動して涙したり、ルールを知らなくても見よう見まねでタオルマフラーを振って応援したりと、サッカーを初めて見たおばあちゃん、おじいちゃんたちがいきいきとした姿を見せてくれました」(浦野氏)

管理部プロジェクト担当の浦野珠里氏イベントのアイデアを若松氏に伝えた時のエピソードを話す浦野氏。スタッフ間の何気ない雑談からイベントのネーミングやテーマにつながることもあるのだとか

 このイベントの次に開かれた教室では、“推し”の選手のユニフォームを着て参加する人もいたそうだ。健康教室を入り口にフロンターレを好きになった人が友人や家族を誘ってフロンターレの試合を見に来るなど、地域貢献活動がフロンターレサポーターを増やすことにつながったわけだ。