Z世代に広がる推し活で
初心者が注意すべきこと

「推し活」がごく当たり前に行われている昨今、Z世代の間では「“推し”が欲しい」「“推し”を作りたい」と口にする人もいるという。彼らは「好きになった相手だから応援する」のではなく、「『推し活』という娯楽を消費したいから“推し”を作る」という感覚なのだ。

「『“推し”を作りたい』とはつまり、『エンタメを消費したい』という意味。これに対して、“推し”にお金も時間も過度に消費するほどのめり込んでいる人は、『推しは“作る”存在ではなく、恋のように“落ちる”存在』で、自己の精神的充足のために応援をしているので、両者はそもそも価値観が合わないのです。コロナ禍以降に誰かのファンになった人は、ファンにもいろいろなタイプがいるという“多様性”を知っておいてほしいですね」

 どちらが正解ということもないが、さまざまな考えの人がいると理解しているだけで、当人の「推し活」の快適さは変わるだろう。ほかにも、推し活初心者に気をつけてほしいのが、「“推し”に理想を押し付けないこと」だ。

「ファンからしたら、出会った瞬間が『自分の理想たる存在』だったのでそのヒトを推し始めたのでしょう。しかし、“推し”たちは日々変化しています。生身の人間でも、アニメのキャラクターでも、それは変わりません。それなのに、変わっていく“推し”を見ると裏切られた気持ちになり、『その髪形はやめたほうがいい』『昔と言っていることが違う』といったような説教まがいの発言をしてしまう人がいるのです。アニメでも『あの展開はありえない』などと制作サイドに文句をつける人もいます」

 気軽に「ヒト」を消費するようになっている今、自分が消費している「ヒト」は自分と同じく“生きている人間”であり“考えが変化していく存在”であると心に留めておかないと、相手を思い通りに支配しようとする面倒なクレーマーになってしまいかねない。とくにコロナ禍で初めて“推し活”に触れた人であれば、“推し”を「人」というより「コンテンツ」として認識してしまっている人も多いため、なおさらだ。

 SNSの登場で変わったZ世代の消費行動は、未曾有のパンデミックによりさらなる変化を遂げた。アフターコロナを迎えたとき、はたして彼らはどのような消費をしていくのだろうか。トレンドを生み出す若い世代の行動に注目したい。