岐路に立たされたジャニーズ事務所
日本の男性アイドル界の行く先はいかに
このキンプリが、なぜ3人脱退となったか。キーワードはどうやら“海外進出”である。
「海外で活躍できるグループを目標にがんばってきたが、改めて自分たちがいる地点を眺めてみると、海外で活躍は難しいのではないか」といったことがグループ内で考えられ、「お互いのやりたいことを尊重する」を実現するために、3人脱退の決断が取られたそうである。
一方、滝沢秀明さんの退任には何が見られるか。氏はジャニーズ事務所の副社長と同時に、ジャニーズJr.の育成などを手掛ける「ジャニーズアイランド」という子会社の社長も務めていた。タレントとして長く活躍し、その後もマネジメント方面で確実な成果を上げてきた滝沢氏は、タレントと裏方の両方からの信頼が厚い。彼がジャニーズから抜けるとなったら、ジャニーズ事務所への影響は素人目に見ても大きそうだ。
ジャニーズ事務所はカリスマであった創業者の不在によって人材の流出が起きていて、現在生き残るか否かの重大な岐路に立たされている。だからみんな、「これは大変なことだ」と口をそろえて嘆息しているらしい。
国内に台頭してきたKPOPアイドルの存在も大きい。かつて、国内の男性アイドルといえばジャニーズ事務所がその差配を一手に握っている印象だったが、テレビ一強の時代に終焉(しゅうえん)が訪れて、ジャニーズ事務所の影響力もやや弱まった。
最近のジャニーズのタレントは、歌やダンスに力を入れている印象だが、K-POPは準備を始めたタイミングが早かった分、全体的なクオリティーでは日本にかなり先んじている。日本には「アイドルにクオリティーは求めない」とする独特の文化があったが、これも近年少し変わってきていて「高いクオリティーを出すべく努力しているタレントをこそ応援したい」と考える人が出てきているので、この流れもジャニーズ事務所が従来型のアイドル像を追い求めるならば逆風となろう。
どうであろうか。ここまでご精読いただいた読者諸氏は、キンプリ、およびキンプリ3人脱退とタッキー副社長退任について、かなり詳しい事情通になれた自信を持てておられるのではあるまいか。キンプリと聞いて「キン肉マンの何か」と考えていた過去がうそのようである。
事情に詳しくなれば観測も楽しくなるはずである。日本の男性アイドル界は今後どうなっていくのか、ジャニーズ事務所の成り行きとともに見守っていきたい。