ニュースで見聞きした国、W杯やオリンピックの出場国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
イベリア半島ってどんな地域?
イベリア半島は、ヨーロッパ大陸の南西端、握り拳の形をした地域です。北はフランスとの国境沿いにピレネー山脈が、南にはネバダ山脈があり、幅14kmのジブラルタル海峡を隔ててアフリカ大陸と向き合います。
半島の面積はおよそ日本の1.5倍で、この5分の4をスペインが占め、残りがポルトガルです。ピレネー山脈の中にはアンドラ、半島の南東端にはイギリスの直轄領ジブラルタルがあります。
半島の大部分は、全体に西南西に緩やかに傾いた平均標高600~750mの広大なメセタ(スペイン語で卓状地の意)と呼ばれる高原状の地形で、その周囲を2000~3000mを超える山脈が取り囲んでいます。
北部のビスケー湾岸から北西部にかけては、通年降雨のある西岸海洋性気候、これに対してメセタ及び北東部を流れるエブロ川流域の低地では大陸性気候を示し、夏季は非常に乾燥します。
南部の地中海岸からカタルーニャにかけては地中海性気候で、さらに乾燥しますが、灌漑を利用した果樹園芸農業が見られます。
高山地域では冬に降雪があり、ピレネー山脈やネバダ山脈の高所には万年雪が見られます。
イスラームの歴史とキリスト教の歴史
スペインやポルトガルでは、国民の7割以上がカトリック教徒です。8世紀にジブラルタル海峡を渡ってきたムスリムが支配した時代がありましたが、15世紀末にはキリスト教国としての統一が進みました。
ムスリムによる支配の象徴として、スペイン南部のアンダルシア地方に建てられたイスラーム様式を取り入れたアルハンブラ宮殿があります。
15世紀以降、大航海時代の主役として世界の海を巡り、日本にもキリスト教や鉄砲伝来など大きな影響を与えました。
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)