競争激化、閉店が決まった春熙店は変化についていけず?
地元のあるメディアが、「最も訪れたいショッピングモール」に関するアンケートを実施したことがある。イトーヨーカドーは25.9%と高い得票率で1位に選ばれた。また、日本国内の店舗も含むイトーヨーカドーの全店舗の中で、成都イトーヨーカドー双楠店は2019年に16億元(現在の為替レートで約315億円)の売上高を記録し、1位を獲得。成都イトーヨーカドーの売上総額も60億元(約1179億円)に達した。成都市民は、「もっとも成都市民の心が分かるスーパー」と高く評価している。
ただ、イトーヨーカドーの北京事業は結果としては惨敗となり、今や1店舗しか残っていない。
しかし、成都では、21年1月31日の時点で、10店舗体制となった。成都イトーヨーカドーの幹部だった三枝富博氏は17年3月、日本に戻り、イトーヨーカ堂の代表取締役社長に就任、今年3月に取締役会長になった。
人気の高い成都イトーヨーカドーも、現在、商業施設の急増で猛追されている。20年と21年に、四川省チェーン商業協会が発表した「成都主要商業複合体およびショッピングセンターの業績ランキング」を見ると、20年は15位だったイトーヨーカドー双楠店は、21年に14.7億元(約289億円)の売上高で18位に落ちた。
今回、閉店が決まった春熙店はこの2年ランクインしなかった。また、企業情報を統計するアプリ「天眼査」の統計データを見ると、14年~21年の春熙店年報によれば、同店の従業員数は14年に386人でピークに達したが、その後年々減少しており、21年現在の従業員数は216人となっている。規模の縮小が印象付けられた。
中国のメディアは、「多くの大型複合商業施設の台頭に伴い、ショッピングセンターが多く現れ、消費レベルもアップした。そのため、以前は春熙路を訪れていた客の一部が他のところに行くように変わった」と分析している。こうした成都市民の消費習慣の変化に、イトーヨーカドーは追いついていけなかったようだ。
中国内陸部の地方都市でのビジネス経営でここまで大成功を収めたイトーヨーカドーは、春熙店の閉店で打撃を受ける。しかし、時代遅れの印象を与える恐れのある従来式ビジネスモデルの修正や戦略の調整のためには、逆に良いタイミングかもしれない。私も引き続きイトーヨーカドーを観察していきたいと思う。
(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)