小川町の晴雲酒造4代目の中山雅義さんは、日本酒の売り上げが陰りを見せたころ、付加価値のある酒と無農薬米を探していた。そのとき、町役場から紹介されたのが金子さんだ。循環農法に賛同し、米代を一切値切らず購入。88年に純米「おがわの自然酒」が誕生した。米の量が足りず、純米吟醸酒は、有機栽培に町ごと取り組む山形県高畠町の無農薬米を合わせて醸し、自然農法で地域をつなぐ酒となる。04年、金子さんと雅義さんは「無農薬で米作りから酒造りを楽しむ会」を始めた。手で苗を植え、稲を刈り、伝統産業の和紙を漉いて酒のラベルを作る体験会だ。05年には蔵の隣に、無農薬野菜とお酒が楽しめる「自然処玉井屋」を開店。地域と農家、消費者を結ぶ役割を担うが、その後、雅義さんは旅立ち、今年の9月24日に金子さんが急逝。今、酒蔵は雅義さんの息子の健太郎さんが5代目を継ぎ、2人の思いを酒造りで継承する。

新日本酒紀行「おがわの自然酒」純米 おがわの自然酒
●晴雲酒造・埼玉県比企郡小川町大塚178-2 ●代表銘柄:純米吟醸 おがわの自然酒、大吟醸 大晴雲、純米 晴雲、吟醸 晴雲●杜氏:吉原卓夫 ●主要な米の品種:美山錦、さけ武蔵、彩のかがやき、五百万石
新日本酒紀行「おがわの自然酒」 蒸し米 Photo by Seiunsyuzou
新日本酒紀行「おがわの自然酒」麹菌を振る Photo by Seiunsyuzou
新日本酒紀行「おがわの自然酒」もろみの櫂入れ Photo by Seiunsyuzou