「今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった」。星野リゾート・星野佳路代表がこう語るのが『社員の力で最高のチームをつくる』だ。なぜ本書は、多くの読者に読み継がれているのか? それは、本書の内容をそのまま実行するだけで組織を劇的に変えることができるからだ。星野氏はこうも語っている。「書かれている内容を一言一句、そのまま実践することだ」。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、チームを劇的に変えるメソッドを紹介していく。(構成:長沼良和)
マネジャー不要の「奇跡のチーム」
トップダウンではなく、社員がチームをつくってみずから積極的に動いてくれる組織だったら、マネジャーはどんなに楽だろう?
そもそも、そんなことは実現可能なのだろうか。
これを実現したのが星野リゾートだ。
星野リゾートの代表・星野佳路氏は、本書から「セルフマネジメント・チーム」をつくることを学び、実際に現場で運用してきた実績を持つ。
マネジャーがいなくても社員だけで高いパフォーマンスが実現できることを実証したのである。
セルフマネジメント・チームとは?
「セルフマネジメント・チーム」は、従来はマネジャーがやっていたことをチームメンバー自身で行うのが特徴である。
セルフマネジメント・チームのメンバーは、最終的に誰の指示も受けず、みずからの考えと判断で行動して最高のパフォーマンスを出すようになる。
そんなチームが実際に存在しており、つくることも可能なのである。
階層的マネジメントに取って代わる
セルフマネジメント・チームにはいくつも利点がある。
・職務満足の増大
・態度の変化「仕方なくやる」から「やりたいからやる」へ
・社員のコミットメントの強化
・従業員と経営者のコミュニケーションの円滑化
・意思決定の効率向上
・仕事の質の向上
・オペレーションコストの削減
・会社の利益拡大(P.169)
なかでも顕著なのが、社員が仕事に対して前向きに取り組むようになることだ。
これまで「仕事は仕方なくやる」という姿勢だったのが、社員が会社のことを「自分の会社」だと思えるようになる。
すると彼らは「もっといい会社にしよう」と思うようになり、ますます仕事が楽しめるようになっていく。
最終的には、人材採用、規律順守、人事評価、資源配分、品質保証等といった経営陣が行う意思決定についても、セルフマネジメント・チームが独自に決定するようになる。
これによりマネジメント・チームが従来の階層的マネジメントに完全に取って代わるようになるのだ。
もちろん、マネジメント・チームをつくるのは難しいが、この点からも取り組む価値は十分ある。
セルフマネジメント・チームのつくり方
セルフマネジメント・チームは4段階の成長過程を経て完成する。
<不満の段階> チームとして仕事をするのが思う以上に難しいので、各メンバーが不満を抱える。強いリーダーシップと同時に支援も必要になる。
<解決の段階> メンバーが力を合わせてチームとして働くことに慣れてくる。リーダー的な役割のコーディネーターを交代制に切り替える
<成果発揮の段階> コーディネーターの存在が重要でなくなり、チーム自体がメンバーを導き、支援するようになる。多様性が価値をもちはじめる。また、チームが重要な意思決定の責任をどんどん取るようになってくる。人材採用、規律順守、人事評価、資源配分、品質保証等、経営者が行う仕事をチームで担うようになる。
途中の段階で不満が噴出するが、正常な反応なので安心して取り組んでほしい。
部下に「指示をする必要」がなくなる
会社が自分を信頼してくれて、能力を思う存分発揮してほしいと望んでいることがわかれば、社員の中の責任感が強化され、突き動かされるように仕事をするようになる。
社員が「もっと良い会社にしたい」と思うステップまで到達すれば、誰に指示されなくても社員は「どうすれば会社のために働けるだろうか」と考えるようになる。
これがセルフマネジメント・チームの力である。
社員の中に本来眠っていた能力を目覚めさせることができるのだ。