「60時間まで」残業させたほうが、
企業としては儲かる

 なぜ60時間なのかというと、残業代の時間単価が60時間までは基準の1.25倍と低いため(60時間超分は1.5倍※)、もう1人雇うよりも、残業させたほうが会社として儲かるからである。猶予期間が設けられていた中小企業も、2023年4月から、大企業と同様、60時間超分の残業代割増率が1.5倍で統一され、長時間労働はさせにくくなる(働き方改革関連法による)。

※ 労働基準法第37条の規定。内閣府資料(『割増賃金の状況等について』2013/10/4)によると、韓国や米英仏独では、時間外労働の割増率は50%。つまり時給1000円なら残業1時間あたり1500円を支払わねばならない。日本は月60時間を超えない限りは25%と、割増率が半分。日本共産党は、残業を抑制するため、「1日2時間、週8時間を超える残業の割増率を50%に、3日連続で残業させたら4日目からの割増率を50%に」という改革案を提言しているが、共産党の主張のほうが国際標準に近いという点からも、日本の異常さがわかる。

 たとえばオープンハウス(建築技術職)は60時間/月込み、サイバーエージェントに至っては、時間外80時間/月込みで、その範囲内では、残業をしてもしなくても、定額の残業代が支払われる。だらだらと仕事をして残業時間が増えるほど給料が増える、という弊害がなくなるため、成果主義的ではある。だが、基本給が安く抑えられるため、業績が悪化した際に、この時間外分をしれっとカットしてくる可能性が高いことには要注意である。基本給を下げるハードルは高いが(労働条件不利益変更)、残業代分を下げるのは簡単だからだ。

(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)