「料理が趣味」の男性をひも解くキーワードは“ロマン”
道具や食材を気合を入れてそろえがちなのも、料理が趣味の男性によく見受けられる傾向である。
そして筆者が観測した限りの範囲だと、女性は鍋系(ホーロー鍋、タジン鍋、ストウブ鍋など)に興味を示すのに対し、男性は包丁と砥石、および鉄フライパンなどからそろえたがる。侍やファンタジーの勇者が格好良く思える通り、“マイ刃物”には男の子心をくすぐる何かがあるように思われる。
鉄フライパンについても刃物に似た趣向が漂っている。「使い込むほど使いやすくなる一生物の道具」などとうたわれる鉄フライパンであり、己が見定めた愛用の職人的道具と生涯をともにしようとする点に、たまらなくロマンが感じられるのである。
また、料理を趣味とする男性は作りたい料理のために汎用性のない調味料を購入したり、食材にやけにお金をかけたりする。ただ、これはどうやら料理を単発でする趣味人の振る舞いであり、毎日料理をする人は(料理が趣味である・なしにかかわらず)もう少しコスパの方に目がいくようになる。
とはいえ、“料理趣味ガチ勢”とでも呼べるべき一派の中には、日々の料理に妥協なく高級な食材を用意する人もいるようである。
“男性は料理に凝る傾向がある”ということの理由には、まず「料理は女性がするもの」という前時代からの伝統・慣例が関係している。男性は毎日料理を作る必要に迫られていなかったので、自分のペースで好きな時に料理に関わることができた。これが“趣味”たる余裕を呼んで、己が注目する料理をとことんまで掘り下げて探究することができるのであった。そしてこの深奥に迫っていく“探究”にも、やはり“ロマン”が含まれるのであった。
また、前述の伝統・慣例によって、女性はかなりの境地にまで達しない限り「料理が趣味」とは呼ばれないが、男性の場合だと少し料理に手を染めただけで「料理が趣味」を自他ともに認められる――という社会的な構造がある。かくして“料理が趣味”の男性は、女性に比べて世に誕生しやすいのである。
筆者は趣味と言えるほど料理をたしなんでいないが、だからこそ、まだ「料理を楽しい」と思える余地がある。しかし非常にタイムリーな私事で恐縮だが、妻の仕事の関係で今後は筆者が夕飯を用意する機会が激増する見通しであり、果たして筆者がどこまで料理を楽しめるかが問われる局面である。
日々の料理をこなしつつ、料理を趣味として昇華できるか――料理にハマった先人たちの傾向を参考に、筆者も「探究」や「マイ刃物」をキーワードに据えながら、自分なりのエンジョイ料理を模索していきたい。