若年層の失業率が
過去最高を記録

 習近平指導部の経済政策は市場原理をなるべく抑えて国家のコントロールを優先させ、規制を強める「反ビジネス」の色合いを強めている。ゼロコロナ政策がまさにその典型だ。ビジネスや外国企業との関係より、ゼロコロナ政策で国家的な事情を優先させた結果、中国の対外的な信頼度は大きく毀損された。

 ゼロコロナ政策に最も翻弄されているのが若者である。16歳から24歳の若年層の失業率は2022年7月に20%と過去最高を記録している。社員の待遇が良く優秀な大卒生を最も吸収するであろうと考えられていたアリババやテンセントなどのIT大手が、習近平指導部の締め付けによって業績が伸び悩んだ上に、これまで中国経済を陰で牽引(けんいん)してきた起業も振るわなくなっている。さらにゼロコロナ政策で中国経済全体を縮小させてしまっているので、そのしわ寄せは若者に集中した。

 若者の就職先が狭まったことは、中国のイノベーションの将来を考えたときに決して些事(さじ)ではない。意欲的な若者がIT企業で活躍し、斬新なアイデアを持った若者が起業するからこそイノベーションは進化するのであるが、ゼロコロナ政策はその可能性を根こそぎ奪ってしまった。

 さらに、中国に新たな技術やノウハウをもたらしてきた外国企業も徐々に中国離れが進んでいる。外国企業は習近平指導部の国有企業優先に巻き込まれて、気まぐれな政策の変更に翻弄されている。2001年のWTO加盟時にあった中国の自由さは、もはや過去のものとなっている。

 習近平指導部は野心的な民間企業について「借り入れが多い」と規制を始めている一方で、国有企業の借り入れは問題にしていない。その結果、国有企業が民間企業を買収する事例が目立つようになっている。これは、イノベーションの観点からは決して望ましいことではない。

 またこのことは、中国国内で国有企業と外国企業が同じ土俵に立ったときに、中国当局が国有企業を優先することを表している。圧倒的な力を持つ外国企業が相手であれば、国有企業を生かすために外国企業への意図的な妨害工作もいとわないということにもなりかねなくなっている。