2022年の共産党大会の時期に、もう一つ重要な出来事が起こっている。それは、中国国家統計局が10月18日に予定していた7~9月期の国内総生産(GDP)の発表を延期したことだろう。

 重要統計が理由もなしに延期されるのは、極めて異例なことだ。10月16日に開幕した共産党大会期間中に発表されることを避けたというのが、妥当な見方だろう。

 結局、10月24日に発表された7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)は物価変動の影響を除く実質成長率で前年同期比3.9%のプラスだった。1~9月期が3.0%だったので、習近平指導部が今年の目標として掲げていた5.5%前後は絶望的になった。

 5.5%がもともと過大な目標だったという見方もあるが、これほど目標から外れてしまった最大の原因が、習主席肝いりのゼロコロナ政策にあることは言うまでもない。

 ゼロコロナ政策はコロナウイルス感染症拡大の当初こそ評価されたが、欧米などがウイズコロナに移行し、やがて行動制限を解いてもなお、断続的に維持しなければならなくなってしまった。

 欧米各国はワクチンで集団免疫を獲得して、その後は徐々に行動を緩和して生活を正常化した。多くの国が多少の犠牲を伴いながらも、経済の正常化に成功している。

 これはウイルスが変異し続ける以上、どこかで区切りをつけて決断しなければならないことだったが、中国だけが取り残された。患者が出ると、その地域全体の住民に対して毎日のPCR検査と過酷な行動制限を課し、人民を強いストレスにさらし、経済を停滞させていったのである。

 習近平指導部がゼロコロナ政策を強いたのは、2020年のコロナ拡大期の医療崩壊があまりにもひどかったからだろう。中国は2000年代以降、経済成長を重視する一方で医療や福祉の充実を怠ってきたツケで、簡単に医療崩壊を起こしてしまう環境にある。医療崩壊を避けるために行ったゼロコロナ政策が、ウイルスの変異に翻弄(ほんろう)されて、やめられなくなってしまったわけである。

 だがこのままでは、集団免疫獲得を先延ばしにするだけで、得られるものがあまりに小さい。どこかでウイズコロナ政策にかじを切るしかないのであるが、進むも地獄、止まるも地獄だ。