それを踏まえて不動産を探すのであれば、すでに述べたように、真の優良物件はすぐに売買でも賃貸でも埋まるので、主力として出回る物件は二級物件という風になる。二級物件とは、交通の便が悪い、築年数が古い、室内設備が劣後するなどで、当たり前のことだがこのような物件は都心であっても地方であっても人気がない。

 安く手に入れることができたのでラッキー、と考えても、実際には安いのにはそれなりの理由がある。不動産は街のイメージや市況の趨勢(すうせい)などで「まさか」とも呼べる予想外の高値になることがあるが、安い物件には「予想外の理由」はない。安い物件には必ず理由がある。これを踏まえて、「安かろう悪かろう」をある程度承知したうえで、取得した不動産をどのように自分の思う姿に改装していくか、が肝になる。

二拠点生活における
理想と現実のギャップ

 私は自宅から約60キロの地点にわずか数十万円の不動産を購入し、二拠点を始めたが、よろこび勇んで始めた当初の理想と現実とのギャップになかなか苦しんだ。

 人間は不動産を取得すると、気分が高揚して「新しい生活ができる!」などと思う。しかしこれが半年、1年と経過すると、二拠点目の物件の維持が面倒くさいと思うようになる。

 まず自宅から二拠点目への移動に大きな時間が割かれ、次第に面倒だと思うようになる。これを試行錯誤の末、工夫すること自体が喜びであると考えているうちはいいが、それがルーティンになるとだんだんと移動する時間そのものがロスなのではないか、とネガティブに考えるようになる。

 よしんばそういった感情をクリアしても、次に立ちはだかるのがゴミの問題である。二拠点目の物件には当たり前だが、その物件が属する自治体固有のゴミ出しルールがある。自宅からゴミ袋を持参しても指定のモノではないので、いちいちゴミ袋を買わなければならない。二拠点目で寝起きすると当然ゴミが出て部屋が汚れる。

 ゴミ問題がクリアされても、部屋掃除の手間は単純に2倍になってしまう。希望に燃えていた二拠点生活だったが、実際には毎回二拠点目を訪れて部屋の掃除をしているだけ…という結果になってしまうことは多い。そうしているうちに掃除自体に熱意をなくし、通わなくなってしまう。二拠点生活者がよく陥るワナである。

 また、自然が豊かだ!素晴らしい!と思っていた二拠点目の地方生活のもくろみがあまりにも楽観的だったと思い知るときがくる。購入当初はきれいに雑草が刈られていた物件敷地は、少し手入れをしないだけで人間が想像するよりはるかに驚異的なスピードで雑草が繁茂する。

 私は、買った物件の余白敷地をカースペースにしようともくろんでいたが、2カ月とたたないうちに雑草に覆われ、駐車場どころではなくなってしまった。強力な除草剤を何度も散布した。その時だけは雑草は死滅するが、また何事もなかったかのように復活する。雑草は恐ろしいものだ。

 買った時は「家庭菜園にできる」などと夢想していたが、それは空想であった。地下に張り巡らされた強力な根や茎が強すぎて、耕地などに転換することはとてもできないのである。重機を使って土壌を根こそぎ掘り返して、表土を入れ替えて改良するなどしない限り、雑草を死滅させて菜園にするなどということは、事実上不可能である。

 土地を農地化することがいかに困難なのかを思い知る。都市生活者はこれが分からない。分からないというより想定していないのである。

 こういった困難を踏まえたうえで、それでも楽しいと思えるのなら二拠点目生活は成功するだろう。第一の問題はネット環境とか、上下水とか、コンビニまでの距離とかではなく、雑草問題である。