都市と地方の二拠点生活を
成功させる三つの要点

 売買でも賃貸でも、マンションであれば雑草問題は原則として発生しないが、すでに述べた通り地方の不動産は地方市場特有の都合に拘束されており、ましてマンション物件は地方において絶対流通量が少なく、売りに出されていたり賃貸に出されていたりする物件は、必然的に地元でも買い手・借り手が中々つかない劣後した物件であることを覚悟すべきである。

 また、区分所有マンションは下手をすると迷宮である。マンションは区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づき運営されるが、例えば「このマンションは価値がなくなったので解体して更地にし、誰かに売ろう」と思っても、所有者全員の承諾が無ければならない。事実上、一旦建てられたマンションは解体することが極めて困難である。マンションの老朽化、幽霊化の将来については現状でも不透明で先例がない場合が多い。いわゆる「一戸建」の自由度とはまったく違うのである。

 管理組合の問題を含めて常に所有者ひとりの意志ではどうにもならない法的断崖に突き当たることがままある。地方での二拠点生活として区分所有物件を買うのであれば、厳重に注意して見定めなければならない。

 二拠点生活の手始めとしては、まず賃貸から試してはどうだろう、という意見も盛んになってきた。賃貸物件であれば、その土地が気に入らなければ契約解除を申し入れればよい。室内備品の故障等も条件によっては大家側の責になり、修理・交換のリスクは少ないと言える。

 しかし、「二拠点生活の手始めとしては、まず賃貸」という発想自体が、冒頭述べたように正しくない。そもそも保守的な地方の大家の少なくない部分が、所有物件を賃貸に出さないので、やはり物件の流通自体が少なく、選択肢が狭まるからだ。

 地方での二拠点生活を始めようという時に、その物件選択肢が狭まるのであれば、何のために二拠点生活を始めようとするのか、本末転倒である。東京都内の西側に本宅をおき、同じ都内の東側にもうひと部屋借りる、というのならこのような心配はないが、普通、二拠点生活ではこのような居住を想定しておらず、二拠点目はやはり他県、地方でとなる。ならばやはり、地方都市における優良賃貸物件の意外な少なさに戸惑うだろう。二拠点生活は「バラ色の田舎暮らし」が約束されているわけでは決してないのだ。

 それでも私が二拠点生活を続けていられるのは、前提的に「バラ色の田舎暮らし」などという期待値をほとんど持たなかったからだ。雑草との格闘、毎度の清掃とゴミ出しの手間、毎回の移動(高速道路)に関わる経済的な負担と時間のロス。こういったものはもとよりある程度覚悟していたからこそ、二拠点生活が続いている。

 賃貸だと多分こうはならなかっただろう。ある時点で、毎月大家や不動産管理会社に払う数万円が、「無駄なのではないか」と思う日が必ず来るからだ。思い切って物件を廉価に購入したからこそ、「少しずつでも住みよい物件に改良しよう」という意志が働いたのだ。

 二拠点生活成功の要点は、(1)地方生活に過度な期待を持たない(2)手に入る物件は優良物件とは限らないと理解する(3)自然の驚異(雑草)に圧倒される格闘が続くと覚悟する――という3点にある。

 繰り返すが、二拠点生活に際して賃貸は向かない。「結局この物件は大家の所有であり、自分のモノではない」と思うと、二拠点目に定住する意欲を喪失するからである。ここは仮の住まいだ、という根底の考え方が二拠点生活を雑にし、当初のモチベーションが劣化する原因になる。