先に心配なのは日銀よりも
民間銀行の資産運用

 ところで、債券の含み損という意味では、日銀よりも心配なのは民間の銀行の方だ。「週刊金融財政事情」の記事(11月29日号、P.6「運用益がリーマン危機並みに悪化、配当原資が枯渇する地銀も」)にあるように、一部の地方銀行の運用状況が深刻に悪化している。

 これは、主に外債の運用によるもので、外債の利回り上昇(価格下落)が地銀の運用ポートフォリオを直撃した。国内金利では利ざやが稼げないとして、外債に手を染めたことが損失をもたらしている。

 こうした地銀の中には、特定の証券会社と親しい関係にあって運用の指南を受けているケースもある。しかし、率直に言ってこの指南役は頼れるような相手ではない。証券会社は証券営業のプロであって、運用のプロではないし、加えて運用のプロであっても相場で負けることはある(ざっくり半分くらいは!)。

 外債運用の損失はそれなりに深刻ではあっても「本丸」の被害ではない。民間銀行のポートフォリオは、円金利が上昇するときが正念場だろう。

 長期ゾーンの金利上昇は利ざやの拡大要因となる。従って、ポートフォリオの金利変動のリスクをヘッジできている場合や十分に吸収できる財務的な体力がある場合は、保有債券では一時損をするとしても本業の収益が改善するのでいい。しかし、長期債・超長期債などに頼って利回りを無理に稼ごうとするポートフォリオを持っている銀行には注意が必要であるように思う。

 個人客が銀行の窓口で個人向け国債を買おうとしたときに、「国債で大丈夫ですか」と脅して、もっと手数料を稼げる商品に誘導しようとする営業トークがあるのだが、個人向け国債は元本保証だ。国債が暴落するようなとき(長期金利が急上昇するとき)に先につぶれかねないのは、日本国政府よりも銀行の方なのは皮肉な状況だ。

 日本の長期金利はリスクとリターンの両面から、運用対象として魅力がある段階にはまだ遠い。個人投資家は今のところ、将来訪れるかもしれない長期金利上昇局面をじっくり待っていればいいだろう。