新発見にこだわらなくてもいい

 たとえ「新しい発見」が見つからなくても大丈夫。効用は他にもあります。慣れない道や景色の中を歩くと、「歩くこと」に集中しますよね。すると、考えすぎていたことや悩んでいたことが一時的に意識の外に出ていきます。体を動かして頭の中の箱をいったん空っぽにすれば、「なーんだ、大したことないじゃん!」と道筋がスッキリ見えてくることもあります。

なぜか聴きたくなる人の話し方『なぜか聴きたくなる人の話し方』
秀島史香
定価1540円
(朝日新聞出版)

 私たちは物理的にひとつの場所に留まっていると、不要不急の考え事まで手を出してしまう傾向があります。自分の中で変に発酵させるより、外の空気にふれて、悶々としたガスを逃がしていきましょう。

 一日の終盤になって、「今日はちょっとストレスが溜まっているな」と感じるとき。私は、夕食の後片付けが一段落したら、10分だけでも夜の散歩に出ます。住宅街のシーンとした夜の空気の中をあてどなく黙々と歩くのです。行動としては地味ですが、これが、あちこち散らばってしまった感情を整理して、まとめ直すという貴重な一人時間になってくれます。

 寄り道と散歩。たかがと思うかもしれませんが、されどの効果があります。習慣として取り入れて、自分を最新の状態にアップデートしていきましょう。

 しつこいようですが、本当にただ歩くだけ。ですが、主体的に景色を変えていけば、気持ちも確実に変わりますし、代わり映えしないと思っていた今日に、昨日とは違う色が入ってきます。

【ここまで聴いてくれたあなたへ】
悩んだら、寄り道、散歩。

(構成/小川由希子)

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)
ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

AERA dot.より転載