証人となったウーバーのシステム担当者は「配達員の応答率の良さや、拒否する確率の高さ、低さに関係なく、エリア内にいればリクエスト(仕事のオファー)が送信される。グローバルなプロダクト設定になっており、どの配達員であってもリクエストが送信され、条件に良い、悪いというものはない。配達員が自分で受けるかどうかを決めるだけだ」と言っている。

 だが、配達の報酬がどうやって決まっているのかが不透明だという(4)の不満も大きい。

 配達員の報酬は、「基本配送料」と「インセンティブ」で構成される。

 前者の「基本配送料」は、店舗で配達員が商品を預かったときに発生する「受け取り料金」、利用者に商品を届けたときの「受け渡し料金」、店舗から利用者宅までの「距離料金」の3つの合計金額から、ウーバーの取り分であるサービス手数料を引いたものを指す。

 後者の「インセンティブ」は、需要が多いエリアや時間帯に配達した場合、追加で支払われるものを指す。

 かつて、これらの報酬体系は内訳が明示されていた。

 だが、2021年5月以降に報酬体系が変更され、事前に「予想配達料金」として仮の金額が提示されるが、確定した報酬金額は配達後にしか分からない形になった。ユニオンはこの仕組みの実態が分からず、半ばブラックボックス化していると主張してきた。

 こうした4点の不満や処遇改善を訴えて団体交渉を申し入れたのだが、前述したようにウーバーが拒否し、都労委の申し立てに至ったのだ。

フリーランスの個人事業主が
「労働者」として認められたワケ

 ところで、フリーランスの個人事業主が、なぜ法律上の「労働者」として認められるのかと疑問に持つ人も少なくないだろう。

 労働者の定義は法律によって異なる。

 労働条件の最低基準を定めた労働基準法では、労働者の範囲は「使用従属性」の有無などによって判断される。つまり、「指揮監督下の労働」という労務提供の形態や、「賃金支払い」という報酬の労務対償性の有無などによって、労働者であるか否かが判断される。

 一方、憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い。

 労働組合法3条では労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準じる収入によって生活する者」と定義している。

 つまり、特定の使用者に雇われていない失業者も含まれるほか、必ずしも雇用契約を結んでいない請負・独立事業者なども保護の対象にするというのが立法趣旨であり、そのように運用されてきた経緯がある。