係争が長引けば
あと数年はかかる可能性も
しかもウーバー側は、都労委の決定に不服であれば中央労働委員会に再審査の申し立てができる。仮に中労委が申し立てを棄却しても、今度は地裁、高裁、最高裁まで争うこともでき、そうなれば決着するまで、あと数年はかかる可能性もある。
紛争が長引けば長引くほど、配達員は労働環境が改善されないまま働かねばならない。ウーバー側も「違法状態」を続けることになり、世間からの風当たりが強くなる。すなわち、双方が痛みを伴うことになる。
また、ユニオンは必ずしも、前述した労基法上の労働者になることを望んでいるわけではない。ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。
ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ。
最後に、ギグワーカーの保護についての、日本の「出遅れ」についても触れておきたい。
ヨーロッパでは労働者性の有無に関係なく、就業中の事故に対する労災保険の適用や、失業時の補償などのセーフティーネットの整備が進みつつある。
また、ヨーロッパでは国が保険料を支払う場合もある。地域は異なるが、韓国も同様だ。スウェーデンのようにフリーランスも失業給付が受けられる国もある。
ギグワーカーを通常の労働者と違う「第3の労働者」と定義し、有給休暇や最低賃金を保障する国もある。
一方の日本では、昨年に自転車配達員の労災保険の「特別加入」が認められたが、自腹で保険料を支払わなくてはいけない。
ウーバーイーツのような料理宅配員は、コロナ禍の中で需要が拡大し、他社も含めると全国で約30万人に増えたといわれる。料理宅配以外のギグワーカーも増えている。にもかかわらず、保護する体制は不十分なのだ。
今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう。