日本の反撃能力行使について
韓国政府は事前協議を要求

 韓国外交部は「朝鮮半島の安保や国益に重大な影響を及ぼす事案は、事前にわが国(韓国)との緊密な協議と同意が不可欠だ」と指摘した。これは日本が北朝鮮に対し反撃能力を行使する場合を指したものである。

 この外交部の指摘が出された背景には、日本政府が海外メディアを対象に行ったブリーフィングでの発言があった。日本政府関係者は、反撃能力の行使についての記者の質問に対し、「反撃能力の行使は日本の自衛権の行使であり、他国の承認を得るものではなく、日本が自主的に判断する」と答えた。

 日本政府は「反撃能力の発動は北朝鮮のミサイル発射などの切迫した緊急事態のはず」「この場合、韓国と協議したり、事前に承認を得る余裕はないはず」と説明した。

 その一方で「反撃能力行使を決断する時は情報収集と分析という観点で、米国および韓国と必要な連携をすることはあり得る」と述べた。それが現実的な対応であろうし、今から事前協議の問題を巡り対立することは建設的ではないだろう。

韓国国内の反発を避けつつ
日本の反撃能力保有を黙認

 韓国の対日安保認識の変化は、明らかに最近の東アジアにおける緊張の高まりを反映したものである。

 北朝鮮のミサイル技術が高度化し、これまでの通常のミサイルでは迎撃が困難になっている。これに対し、尹錫悦大統領の対抗戦術は、3軸体制といわれる自主国防体制の強化と米国の拡大抑止戦略との連携、日米韓協力の強化で対抗する姿勢を示している。

 3軸体制とは具体的には次の3つを指す。

(1)北朝鮮のミサイル・核攻撃を探知した際に、先制攻撃するキルチェーン
(2)北朝鮮のミサイルを迎撃する「韓国型ミサイル防衛」
(3)北朝鮮が核攻撃をした場合、北朝鮮指導部に直接報復する

 北朝鮮の核・ミサイル使用に対しては反撃することを基本としている。したがって、日本が反撃の能力を持つことも、現実的な選択であると理解しているのだろう。

 半面、日本が自主的に反撃能力を朝鮮半島で行使することに対する国民の反発は依然として強い。

 韓国の野党は尹錫悦大統領について「親日国防」だと批判している。また、ハンギョレ新聞も17日付社説で「日本が『戦争のできる国家』へ、事実上豹変した」と警戒感をあらわにしている。このため、事前協議なしの日本の反撃に対しては、尹錫悦大統領も国内では表向き同意できないという苦しい立場を反映している。

 それを容認することは尹政権批判につながり、日米韓防衛協力に対する批判にもつながりかねないからだ。