今回の安保3文書の改定で、韓国は日本の安保にとって「極めて重要な隣国」と位置付けられた。これに関して尹錫悦政権は「(尹政権樹立後の)肯定的な流れが続いている両国関係が反映された」と好意的に評価している。また、日本の防衛力強化そのものへの賛否を明確にしなかった。

 これらの反応を総合すると、尹錫悦政権の反応は、韓国国内の反発を避けつつ、日本の反撃能力保有を黙認すると解釈するのが妥当であろう。

竹島を巡る表現については
即刻削除するよう要求

 日本が改定した国家安全保障戦略で竹島について、「日本固有の領土」という表現を追加し、「粘り強く外交努力をする」としたことに関し、外交部報道官の論評において「日本政府が発表した国家安全保障戦略改定案に、歴史的・地理的・国際法的に明白なわれわれの固有の領土である独島に対する不当な領有権主張を含めたことに対して、強く抗議し、これを即刻削除することを求める」と主張した。

 外交部と国防部は、日本大使館の総括公使と防衛駐在官をそれぞれ招致し、抗議を伝えるとともに即刻削除するよう要求した。

 韓国側は、国家安保戦略で示された竹島への言及は、朴槿恵(パク・クネ)大統領時の国家安保戦略より、領土権の主張をより一層強化したものと懸念している。このため韓国側には、日韓関係の改善に冷や水を浴びせるものとの指摘がある。

 しかし、日本が竹島問題に対する主張を強化したのは、韓国側が、故盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以来、竹島を領土問題から歴史問題に位置付けを変え、日本が領土問題として行ういかなる主張にも強硬に反発してきたためである。

 韓国が竹島を歴史問題とした背景には、日本が竹島を島根県に編入した1905年は日本が朝鮮を保護領としたのと同じ年であり、竹島の島根県への編入は日本の朝鮮併合への第一歩だとの主張がある。

 文在寅政権になってこうした主張が際立っており、東京オリンピック組織委が聖火リレーの地図に竹島を小さく記載したことに対し、文在寅政権の関係者による東京オリンピック・ボイコット論にまで発展した。

 日本は竹島について強硬な姿勢を取っているわけではなく、領土問題として当然の主張をしているだけである。しかし、韓国では、竹島に関する教育やメディアの報道によって日本には絶対に譲歩できないとの認識が定着しているため、日本が主張を強化することには決然と反発するのが定番になっている。これは尹錫悦政権においても同様である。

 日韓であらゆる歴史問題が解決しても、竹島問題だけは最後まで残るであろう。それが日韓関係改善の障害となることは不可避であり、日本の立場を損なわない形で、問題を先鋭化させず安保協力の障害とならないようマネージしていく以外ないだろう。尹錫悦政権としても竹島の問題で対立を一層激化させることは望んでいないだろう。