1993年に『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系列)が放送された。タイトルを読んだ時点で迷子になる世代もあると思うが、ポケベルとはバブル期に開発された通信機器で『ポケットベル』の略語である。無線通信で、小さな画面に数字のみが表示される。電話番号や、数字を駆使した言葉が画面に現れると、受け取った側はさあ大変。相手に連絡をするため、公衆電話を探して、テレホンカードを財布から取り出して、やっとつながる時代だった。正味、連絡が取れる前にかかった時間は30分間くらいであろうか。もどかしい。ややこしい。そう思う人もいるだろうが、これが1990年代には最速の交信手段だった。

『ポケベルが鳴らなくて』は、女性社員とその上司による不倫物語。思うように会うことのできない二人をつなぐのは、ポケベルだったというオチである。内容を俯瞰で見ても、やはり不倫は不倫なので、解せない部分はあった。ただ作品の主演女優、裕木奈江がべらぼうに可愛らしかった。さらに、同タイトルの曲が主題歌となり、これもドラマ同様の話題作に上がった。

再放送の『愛していると言ってくれ』が若者に話題沸騰!

 そしてすれ違いに皆が騒然とした作品といえば『愛していると言ってくれ』(1995年・TBS系)だ。すれ違い案件は2020年のパンデミック中に起きた。皆の記憶にもあると思うが、あのときは一斉にエンタメ制作が止まってしまうことになった。スタートしたばかりの連続ドラマも収録は中止。でも地上波各局が放送を止められるわけがなく、(あくまで予想だけど)苦肉の策として、過去作が放送された。ここにラブストーリーの『愛していると言ってくれ』があった。

 榊晃次(豊川悦司)は聴覚障害を持つ画家、恋のお相手は女優の卵である水野紘子(常盤貴子)。超絶色男の彼氏の耳が聞こえないというだけで、すれ違う原因の王手は出たようなもの。バイト生活の女優には携帯電話も買えず、買ったところでメール機能もない時代だった。そこで会いたいときはひたすら相手の帰りをお互いの家で待つのである。ああ、何たるもどかしさよ!

 この再放送に昭和生まれは歓喜したけれど、若手にとっては初めましての作品だ。でも他に見るものがなければ……と見ると、そこに描かれているのは自分たちの知らなかった同世代の若者の日常。面白味に浸る部分もありつつ、彼らにはこんな疑問がわく。