「私が死んじゃったら、あなた大変よ」とかつて妻に脅かされたことがある。いまはどうだろうか。「全然へっちゃらだよ」と言えるくらいまで家事の腕を上げることが、私のモチベーションになっている。
年齢という“鋼鉄の天井”を押し返せ!
年齢を重ねるほどに知力・体力の劣化速度は速くなってゆく。そこには、渦潮にまかれて海の底へと引きずり込まれていくような恐ろしさがある。
だが幸い、もがきようはある。「負けるものか!」とサバイバルしているうちに、できないなりになんとかする術を見つけていく。「なんだ、けっこうやれるじゃないか」と妙な自信がついてくる。それも面白い。
「そのお年で元気に働けるなんて、すごいですね」と皆はおだててくれるが、体のなかは年相応に弱っている。しかし嘆いてばかりはいられない日々、「老いに負けるものか!」の気持ちで生きているのだ。
勘違いしてはいけないのは、老人の「負けるものか!」は「勝ってやろう」とは違うということだ。「どうせ勝てないから、逃げ回れ」に近い。
年齢と真正面から闘ったら負けるに決まっている。私が一貫してやっているのは、徹底的に老いから逃げ回り、徹底的にごまかすこと。勝てないながらも、せめて長期戦に持ち込み、人生の終わりを少しでも先送りにしようじゃないか、ということである。
残された能力を総動員して、ごまかしごまかし、今日を生き延びる。なんと創造的な毎日であることか!
1日を終えると深い満足があり、ささやかな勝利を噛みしめる。体力の衰えを嘆いている暇はない。衰えを乗り越える方法を考えること自体を、楽しみにしてしまうのだ。
会社に行くのが一番の健康法
私は毎日、判で押したように同じことを同じ順番でこなしている。それは確かに「自分のことは自分で」するためだが、このルーティン自体が健康法でもある。
何より「毎日会社に行くこと」自体が、最高の健康法だと思う。会社に毎日通うため、という目的があってこそ、規則正しい生活習慣を維持できるからだ。