中華人民共和国を建てた毛沢東は、マルクスの影響から「宗教は毒である」と言ったとされる。そこから中国では宗教は統制すべき対象となり、1966~77年の文化大革命ではさらに徹底した宗教弾圧が断行されたのである。仏教徒をはじめ、中国発祥の儒教や道教の信奉者も激しく迫害され、多くの命が失われた。寺院などの宗教施設もことごとく破壊された。

 こうして中国の庶民がもっていた信仰心は、国家権力によって踏みつけられた。代わりに信ずるべきものは共産主義であり、中国政府だと信じ込まされたのである。

 共産主義国家の反宗教政策は、ソ連でも進められた。当時、最高指導者の座についていたスターリンは、ロシア正教会のハリストス大聖堂を爆破し、跡地を温水プールにした。

 スターリンの死後、実権を握ったフルシチョフはさらに激しい宗教弾圧を行い、ロシア正教会を閉鎖に追い込むため、聖職者を軒並み検挙していった。ソ連時代に殺害された聖職者は、約20万人にも上るといわれている。共産主義体制では、信教の自由は保障されないのである。