無罪や執行猶予でも
巨額納税義務の可能性

 ただ、一つ付け加えておきたい。無罪や執行猶予になったからと言って、すべてが幕引きとなるわけではない。弁護側は無罪を主張しているが、田口被告が別の口座に振り替えた事実まで否定しているわけではない。

 所得税法36条の規定する「収入とすべき金額」または「総収入に算入すべき金額」について、基本通達は「その収入の基因となった行為が適法かどうかは問わない」とある。つまり合法でも違法でも、懐に入れたお金の税率分は納めろというわけだ。

 もともと暴力団対策で制定された法律ではあるが、最近は「犯罪収益移転防止法」により、警察などが刑事事件の捜査で発覚した不法収益に関し、税務当局に連絡する「課税通報制度」も重視されている。

 今回の4630万円は一時的にとは言え、田口被告が懐に収めたという事実は判決内容にかかわらず、法的に動かないだろう。であれば「一時所得」か「雑所得」のいずれかで、所得税の税率は4000万円を超える場合は45%。控除額を差し引いて単純に計算しても、今年の確定申告で約1870万円の納税義務が発生する。

 決済代行業者が阿武町に返金したお金はどういう背景・思惑があったのか明らかになっていないが、税務当局が「田口被告の阿武町に対する債務を肩代わりした贈与」と判断すれば、2000万円超の贈与税が発生する可能性も排除できない。

 言うまでもなく、納税は国民の三大義務。民事的な債務と違い、自己破産したとしても「バックレ」は許されず、一生背負っていくことになる。

 田口被告がやったことは「降って湧いた大金に目がくらみ、ちょっとした出来心」なのだろう。だが「元のさやに収まったからおとがめなし」で済むほど、世の中はそんなに甘くないということだ。