両者の対日政策の方向性を予測するほうがずっと重要である。
未来予測とは断定的な予言や、漠然とした予想とは違う。未来予測とは不確実性を低減することである。つまり、どんなことが起こっても冷静に判断して、行動できるよう物事両面の準備をするために未来予測を行なうのである。
どんなことが起こってもジタバタしないための未来予測の手法がシナリオプランニングだ。シナリオプランニングは、軍事戦略を立てるために米国で研究された。
単純に言うと、未来に対して特徴が異なる複数のシナリオを考えて、行動するということだ。たとえば、現在「ウクライナとロシアは、どちらが勝つか」という問いをよく耳にするが、私たち日本人にとっては、どちらが勝つかはある意味、さほど重要ではない。
「どちらが勝っても日本人が大丈夫なようにすること」または「戦争が継続しても日本人が受ける影響を最小限にすること」のほうが重要だ。つまり、シナリオプランニングを行なう理由は、どんなシナリオが起こっても、冷静に意思決定、行動できるようにするためなのだ。
未来を予測するシナリオは3種類
シナリオには、「基本シナリオ」「代替シナリオ」「想定外シナリオ」と、大きく3つの種類がある。
基本シナリオは、過去から現在までの推移が継続されるシナリオだ。過去から現在までの推進力(ドライビングフォース)を未来に投射してシナリオを作成する。
代替シナリオは、今後、最も変化する可能性が高いドライビングフォースを変えてシナリオをつくる。たとえば、現在のドライビングフォースのひとつが「就業人口の減少」であるとすれば、それを変えたシナリオをつくるということである。
想定外シナリオは、最も変化しそうにないと思われるドライビングフォースが崩れると仮定してシナリオをつくる。たとえば、「AI化の衰退」といったドライビングフォースを考えてみる。想定外シナリオには大胆な発想が必要だ。
まずはこれらのことを頭において、以下に解説するシナリオの基本的なつくり方を理解してほしい。
筋の良いシナリオをつくる2つの手法
シナリオを考える上では、いくつかの手法や思考法がある。代表的なものがバックキャスティングとフォアキャスティングである。
・バックキャスティング
バックキャスティングは、遠い未来の予測をするための手法だ。
これは集めた情報からいったん離れて、想像力を働かせて、未来に起こりそうな事象や、未来の理想像などを設定して、それが起こるためにはどんな条件が必要かを考えていく。いわば、未来から過去を見通す思考法である。