ドイツ企業が「環境対策」にカネをかけても、増収増益を維持できる理由ドイツでは政府も企業も「環境対策と経済成長は両立する」という考えの下に経済活動を計画したり、行ったりしている(農業残渣から電気エネルギーを生産するバイオガスプラント、写真はイメージです) Photo:PIXTA

33年間にわたってドイツに住んでいるジャーナリストの熊谷徹さんは、企業、市民、政府が環境保護に多大な費用(コスト)と労力をかけているといいます。そこで今回はドイツ在住のジャーナリスト熊谷徹さんの著書『ドイツ人はなぜ、年収アップと環境対策を両立できるのか』から、ドイツ人が環境にお金をかけても、経済成長を続けられる秘密について抜粋し、紹介します。

合言葉は「持続可能性」

 私は1990年から33年間ドイツに住んでいるが、この国の人々が環境保護にかける情熱には、びっくりさせられる。私は彼らの思想を「環境ロマン主義」と呼んでいる。

 ドイツの町を歩くと、駅、小売店、スーパーマーケットやデパートなど至るところで「持続可能性がある」、「エコ」、「ビオ」、「環境にやさしい」というキャッチフレーズが目に飛び込んでくる。

 特に「持続可能性がある(英語でサステナブルsustainable =ドイツ語でナハハルティヒ nachhaltig)」という言葉は、流行語のようになっている。この言葉は、人間の活動やそれによって作られた製品が、生態系や自然環境に悪影響を及ぼさないということを意味する。

 たとえば化石燃料を原料とするプラスチックのコップは、土の中に埋めても分解されない。これに対し、トウモロコシを原料にしたコップは土に埋めれば分解されるので、自然界への悪影響が少ない。つまり化石燃料から作られたプラスチックよりも持続可能性が高いということになる。