大創出版のウェブサイトやTwitterアカウントで、カードの次回出荷時期について発表していることからも、その人気ぶりがうかがえる。早くもヒット商品となった蟲神器だが、西田氏は開発経緯について次のように語った。
「以前から弊社では、人狼やトランプをはじめとした商品開発をしておりました。その後、企業タイアップでピザーラ様などと一緒にカードゲームの商品化をさせていただきました。他にもYouTubeやTV番組などでいくつかの商品を取り上げていただいたことで大変反響がありました。それからさまざまなカード系ゲームを2019年から検討するようになり、その一つとしてTCGの構想がありました。簡単に制作できるものではないことは重々承知していましたが、はじめてのダイソー発のオリジナルを制作したいという思いは、かねてよりありました」
西田氏の肩書は代表取締役であるが、少数精鋭の同社では西田氏も開発チームの一人として現場の指揮を執ったという。
図鑑としても使えるように
イラストや解説文を工夫
そして、今回蟲神器のゲームデザインを担当したクリエイターのNIZA氏と2020年に出会ったことで、企画が大きく前進することとなった。
「もともと、オリジナルで制作することを重視していたため、過去にはやったものを調査し、虫だけでない生物や人物などさまざまな案を検討しておりました。その中で、NIZAさんから『子どもに身近なのは絶対、虫だよ』という助言もあり、子どもから大人まで、幅広い客層に支持されるダイソーのTCGでは虫がベストだと考えました」(西田氏)
虫と方向性を定めた後、2021年春にダイソー本社へ企画を提案。担当バイヤーから特に反対はなく、むしろ「おもしろい!」と高評価を受けた。そして、「初めてトレーディングカードゲームで遊ぶ人へ向けた、子どもから大人まで楽しめるシンプルなもの」というコンセプトで制作を開始。
「何度も検討を重ねて虫のラインアップを決め、イラスト進行と並行してテストプレーや内容の調整を行い、同時にカードデザインやパッケージのデザインを制作。図鑑としても楽しめるように昆虫研究家の伊藤年一先生にも監修していただき、解説文も入れるなど、こだわった部分はたくさんあります。製造もホログラムの調整や試作品のチェック、仕様の確認と調整、交渉、為替を注視しながら製造を開始、と激動の工程でしたね」(西田氏)
イラストについては、虫をどの程度リアルに描くかという点で、かなり議論したという。
「あまりリアルに描きすぎると気持ち悪いと思われる方がいる一方で、図鑑という特性を持たせるためには、ある程度のリアルさが必要。その線引きは難しかったです。また、虫の特徴やディテールを見せる構図やイラストのサイズ調整も苦心しましたね」
例えば、「アカアシクワガタ」のカードでは足の赤さがわかるようにおなかを見せるようなイラストの構図になっているなど細かい工夫がされているのだ。