幻のフェラーリ「ピニン」、40年前にお蔵入りした4ドアセダンのコンセプトカーとはテスタロッサと並ぶセルジオ・ピニンファリーナ。1961年に創業者である父親からピニンファリーナ社を引き継いでいる

 フェラーリ ピニンはピニンファリーナ創立50周年を記念して発表したフェラーリバッジの付いた4ドアサルーンであり、2+2モデル フェラーリ400のシャーシをベースに1台だけが製造された。この“ピニン”という名は当時のピニンファリーナのトップであったセルジオ・ピニンファリーナが社の創業者たる父ピニンに捧げるという重要な意味合いを持って付けられたもの。さらに社内開発コードは累計1000台目という記念すべきプロジェクトとしてPF1000とも付けられていた。つまり、ピニンファリーナのプライドをかけた一台だったのだ。彼らとしてはこのモデルを何としてもフェラーリ史上初の4ドアサルーンとして市販化しようと考えていたのだ。

1台のみが制作されたフェラーリ4ドアモデルの試金石

幻のフェラーリ「ピニン」、40年前にお蔵入りした4ドアセダンのコンセプトカーとは1980年に発表されたコンセプトモデル「フェラーリ ピニン」

 当時、ピニンファリーナはフェラーリの専属デザインセンターのような存在であったし、エンジニアリングを含むクルマ全体のコンセプトに関しても開発提案する立場にあった。もちろんこのピニンもフェラーリからの承認を得て、ベースとなるコンポーネンツの提供を受けている。エンツォ・フェラーリ自身もフィオラノでおこなわれたピニンのプレゼンテーションにおいて、自らこのクルマに乗り込み、「このデザインはとても良い」と評し、当時、親会社フィアットの重要な役員としてフェラーリを担当していたルカ・モンテゼーモロもそのプロポーションをとても美しいと評価した。