近年、「頭の回転の速さの象徴」としてお笑い芸人が多くの場面で活躍をしている。そんなあらゆるジャンルで活躍をし続けるお笑い芸人たちをこれまで30年間指導し、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも話題になった伝説のお笑い講師・本多正識氏による1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』が発刊された。本多氏の授業は、お笑い芸人だけに留まらず、今ではビジネスパーソンや経営者にも大人気となっている。本記事では、『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』の出版を記念して、本多氏にインタビューを行った。

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「地頭」を鍛えるためにビジネスパーソンが「お笑い」を学んでいる

ーー最近、お笑い養成所にビジネスパーソンや経営者が増えていると聞いたのですが本当なのでしょうか。

本多正識氏(以下、本多) はい。昔は学生や既卒の人がNSC(お笑い養成所)に多く通っていましたが、今ではビジネスパーソンや経営者、さらには歯医者や整体師まで多種多様な人が生徒として養成所に入学してきます。

ーー皆さん、お笑い芸人を目指して入学してくるのでしょうか。

本多 もちろん、芸人としてのキャリアを歩みたいと入学してくる人が多いですが、それだけではありません。ビジネスのスキルアップのため、新しい環境に身を置くためなどの理由で入学してくる生徒も増えています。

ーービジネスのスキルアップですか。少しイメージが湧かないのですが、どのようなニーズなのでしょうか。

本多 そうですよね。私も最初は戸惑いました。

 ありがたいことに大阪を中心とした関西圏では「お笑い芸人」は賢くないとなれない職業として認められています。ネタづくりもそうですが、バラエティ番組での即興トークなど、芸人独特の思考法は高度なコミュニケーションやアイデアを必要とするビジネスパーソンにとって魅力的に映るらしく、スキルのひとつとしてお笑いを学びたいそうです。

ーーたしかに、お笑い芸人さんは頭の回転が速いイメージがあります。

本多 入学してくるビジネスパーソンにもそう言われます。ですから、あくまで教えていることは「お笑い」なのですが、生徒によってはそれが「ビジネス」や「プライベート」のスキルとして役に立っているのでしょう。

ーーおもしろいですね。具体的に「お笑い」がビジネスに役立つ内容などもしあれば教えていただくことはできますでしょうか。

本多 トーク番組で突然話を振られたときに芸人たちはどのようにして、面白いことや気の利いたことを考えつくのか、その思考回路の話は反応がいいですね。

 ああいった会話の切り返しも「センス」という言葉だけで片付けられがちですが、そんなことはありません。行き当たりばったりの思いつきで芸人たちは面白トークを繰り広げているわけではなく、「論理的にトークを組み立てる」「空気を読む」「言い方に工夫をする」などの合わせ技で笑いをとっています。

 こういったことを順を追って詳しく解説すると、ビジネスプレゼンや商談でも応用ができるとのことで、生徒の目の色が変わります。

ーーたしかに、すごく面白そうです。

本多 生徒から話を聞くと、社会に出るとマナーや仕事の仕方は学ぶとのことですが、頭の使い方やコミュニケーションについて学ぶ機会はそこまでないというのです。ですから、そのあたりをNSCで補うということでした。

 また、頭の使い方といっても受験勉強のような意味での頭の使い方ではなく、頭の回転の速さや柔軟性に代表されるいわゆる「地頭」をお笑いで鍛えたいそうです。

 私自身、お笑いにそういったニーズがあると思っていなかったのでとても嬉しく、こういった広がり方は今後も進むといいなと思います。どなたかが「NSCへの1年留学」と言っていました。嬉しい言葉です。

 企業や大学へ出向いて「おでかけNSC」「キャンプNSC」「NSC短期集中レッスン」なども今後可能性があるのではないかと思っています。