社員が迷わないためにやること

 それでは、会社への貢献の「実感」を、どのように感じさせればいいのでしょうか。

 それは、「何をすれば貢献しているのかを明確に示すこと」と、「それができたかどうかをしっかりと評価をすること」です。

「どうすれば会社に貢献できるかを自分で考えなさい!」と、社員に言ってしまうのは、経営側の怠慢です。

 明確に、「どうすれば貢献になるのか」を示さなくてはいけません。

 あなた自身も、「これは会社への貢献だ」と思っておこなった行動が、まったく評価につながらなかったようなことがないでしょうか。

 ちゃんと示しておかないと、そのように、誰にとってもメリットのない最悪の状況になるのです。

とにかく「定量化」しよう

 それでは、どのように明確に示せばいいのでしょうか。

 それは、「評価の項目をできる限り定量化する」ということです。

 会社側、上司側が「貢献」だという結果と、部下側の認識がズレないように目標設定します(詳しくは拙著『数値化の鬼』に方法をまとめています)。

 目の前の目標が定量化され、明確になれば、未達成だったときも、「何が足りないか」が一目瞭然になります。

 そして、その不足を埋めることができれば、会社からもその「貢献」を評価されます。

 まさにそれが、自らの成長の実感につながるのです。

「目標達成する管理職」に求められること

 会社組織において、現場に近づけば近づくほど、「自分の目標が、本当に企業理念の達成に近づいているのか?」と不安になる人が現れます。

 そのとき、上司は、次のように返す必要があります。

「あなたの目標の達成は、上からの目標達成に貢献できるように設定されています。それをするのが上司である私の役割です。それが重なって企業理念の達成につながるので、管理職や経営陣を信じて、目の前の目標達成に全力を注いでください」

 このように導くのが、管理職の役割です。

 そこでどれだけ具体的に説明しても、組織では役職に応じて情報や経験が違うので100%理解させることは不可能なのです

 ここまでのまとめです。

 社員のエンゲージメントを高めるためには、社会性のある「企業理念」を設定し、その理念に近づいていく目標をそれぞれに与えること。

 その目標に達することが「貢献」であり、それを会社は「評価」をすること。

 この方向性で経営ができれば、自動的に社員のエンゲージメントは高まります。

 間違っても、エンゲージメントを高めるための特別な施策をおこなう必要はないのです。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。主な著書に、シリーズ66万部を突破した『数値化の鬼』『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。