全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

【3000社の会社を見てきた結論】間違った努力をし続ける部下を変える方法Photo: Adobe Stock

「変数」を知っておく

 仕事の頑張りどころの見極めに必要なのが、「変数」という考えです。

 数学が得意だった人は、「y = ax + b」という一次方程式を思い浮かべてもらうと、「x」が変数であり、それにより「y」の値が変わるということがイメージできるでしょう。

「a」と「b」は定数であり、与えられた数字なので、ここは変えられません。

 数学が苦手でも、この本質は理解しておかないといけないので、さらに例を挙げましょう。

 たとえば、大事なプレゼンに臨むとします。資料作成の時間を1時間から2時間に増やし、レイアウトやデザインにこだわり抜いたとします。

 しかし、プレゼンの結果があまり変わらなかったらどうでしょう。ここで2時間の努力を3時間や4時間に増やし、さらに資料作成に時間をかけるのは、間違った努力の仕方です。それは、「プレゼン資料の『完成度』が『変数』ではない」からです。

 今度は、プレゼンの様子を動画で撮影し、自分で見返してみるとします。すると、資料をめくったときにすぐに要点を伝えることなく、ダラダラと前置きの話をしていることに気づきました。

 そこで、「次の資料に移ったら、最初の10秒で結論を述べる」という方法を試したとします。すると、プレゼンを聞いている人の反応が変わり、プレゼンの成功する「回数」が以前より増えました。数値化された成果が出たのです。

 こうして、「プレゼンでの『伝え方』が『変数』だった」ことに気づくことができます。

「間違った努力をする部下」を変える方法

 このように、結果を出すためには、

「変数が何か」
「どこに変数が隠れているのか」

 ということを、試行錯誤して見つけ出さないといけません。ここが仕事の成果に直結します。

 間違った努力をし続ける部下には、この考え方を徹底してマスターさせましょう。

 まずはプレーヤーとして、自分の仕事の変数を見つけられること。次に、マネジャーや経営者として、マイナスにつながる変数を減らすこと。

 いくら努力しても変えられない部分、つまり「定数」は、さっさと諦めることです。心を鬼にして、数字と向き合いましょう。そのための方法論は、『数値化の鬼』という本にまとめているので、ぜひチェックしてみてください。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。20万部を突破した最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部のベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。