全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏。「リーダーの言葉は遅れて効いてくる」「仕事ができる人は数値化のクセがある」などの考え方が、多くのビジネスパーソンに支持されている。近刊の『数値化の鬼』では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介した。
この記事では、最近、経営者の間で話題となっている「人的資本経営」という概念について語る。これからのビジネスパーソンに必須の概念を、ぜひ身につけてほしい。

【3000社の会社を見てきてわかった】働く実感を持てる会社、持てない会社。決定的な差とは?Photo: Adobe Stock

「エンゲージメント」への誤解

 あなたは、働く上で、どのようなことを重視しますか?

 最近では、「エンゲージメント(自発的貢献意欲)」という言葉をよく聞きます。

「人材版伊藤レポート」を参照すると、次のように書かれています。

「現在の日本企業における組織と個人の関係性を見ると、日本は従業員エンゲージメントが世界各国と比較しても著しく低く、従業員が自律し、自発的な貢献意欲に溢れているとは言えない状況にある。」

 このように、「エンゲージメント」の向上が人材戦略上の優先課題に挙げられています。

 エンゲージメントとは、「企業が目指す方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていること」と定義されています。

 多くの日本企業でも、従業員エンゲージメントを高めるために、さまざまな施策が試みられていると思います。

 しかし、残念ながら、そのほとんどがムダだと私は考えています。

 なぜなら、エンゲージメントは、「何か施策を講じると高まるもの」ではなく、「働く中で自動的に高まっていくもの」だからです。

会社がやるべき「3つのこと」

 私たち識学では、エンゲージメントについて、次のように定義しています。

「会社が成長していること、社会における価値が高まっていることを実感し、その成長に自ら貢献ができていることを感じることができたときに、自動的にエンゲージメントは高まる」

 そのために、会社がやるべきことは次の3つだと考えています。

 1つ目は、「会社を成長させること
 2つ目は、「その成長によって社会からの評価がどのように高まっているかを表現すること
 3つ目は、「貢献できていることを実感させてあげること

 1つ目の企業成長については、どんな企業もそれを目指しているでしょう。2~3つ目について詳しく解説していきます。

 あなたが所属する会社が、社会における価値が高まっていることが実感できれば、その一員であることを誇らしく思うはずです。

 会社が進んでいる方向に疑いがなく、理解や共感が進むのは、容易に想像ができますよね。

「企業理念」がきっかけとなる

 では、その企業がどうして社会に存在しているのか、そして、どのように社会に価値を提供するのかを表現するのは、何でしょうか。

 それは、「企業理念」です。

 本来は、企業理念の旗印に共感し、その企業で働くことをあなた自身が選んでいるはずです。

 企業理念を果たすように日々の仕事をし、自分の所属する会社が社会における価値を高めていることが実感できれば、自然と、企業の目指す方向に理解や共感をする従業員が増えます。

 企業理念が自発的に貢献しようとする“きっかけ”になるのに違いありません

 会社がやるべきことは、企業理念に近づく方向でどのように社会に価値を提供しているのかを、従業員に対してしっかりと表現することです。