全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

【3000社の会社を見てきた結論】仕事ができる人、できない人のたった1つの特徴Photo: Adobe Stock

仕事の「中身」を細かく砕く

「仕事ができる人」は、まず、仕事の工程を細かく分けるところから始めます。

 たとえば、自社で開発したシステムを商品に、法人営業で契約を取る業務をしているとします。これを、「PDCA」に置き換えましょう。

「P(目標)」は、「月3件の契約を取ること」だとします。
「D(行動)」は、「1日4件のアポを入れること」だとしましょう。

 さらに、1つの業務を時系列に分けると、次のようになります。

1 最初のアポイントを入れる
 ↓
2 お試し期間としてシステムを試してもらう
 ↓
3 契約の申込みを獲得する

 というように、1つの契約を取るまでの工程を3つに分けることができます。

「行動量」を増やすためには、最初の工程を増やすことです。とにかくアポをたくさん入れることに集中します。

 ここから、さらに成長する人は、それぞれの工程での問題点を整理します。

 たとえば、アポが2倍に増えたのに、契約件数が2倍になっていないとします。それぞれの数字をかぞえてみると、以前は、

・アポ 60件
・お試し 6件
・契約 1件

 という状態でした。そして、「行動量」を最優先した結果、

・アポ 120件
・お試し 12件
・契約 1件

 と、改善できたとします。
 アポが2倍になったおかげで、12件のお試しの導入にまでこぎつけています。
 ただし、最終的な申込みにまでは1件しか進んでいないことに気づきます。

 ここで、どのようにプッシュすればいいのか、そこに「変数」が隠れていそうです。
 ガムシャラにアポを増やしながらも、「最後の契約に結びつけるには『どこ』を頑張ればいいのか」にフォーカスしてみます。

「なぜ?」を繰り返せ

 お試しにまでこぎつけた12件のクライアントから、意見を集約してみたとします。

 すると、その8割から「使いにくい」「とっつきにくい」という声が出てきました。

 それを改善するためには、

「サポート体制があることを伝える」
「ちゃんと担当者を付ける」

 などのメリットを提示する必要があることに気づけます。

 もしくは、「試用期間に一度も連絡がこなかった」という声も寄せられたとします。
 最初のお試しを導入してもらうまでは力を入れているのに、その後、なんのフォローもなかったら、契約する気は下がっていきます。

「実際、使ってみてどうですか?」
「何かお困りではありませんか?」

 と、何度か連絡を入れてみたら、もっと早い段階で改善点を知ることができて、親身になってくれる印象を与えられ、契約に結びつくかもしれません。

 実際に、試用期間中の連絡やフォローの「回数」を増やすと、契約件数が1件から2件、3件と増えたとしましょう。

 ここで初めて、連絡やフォローの「回数」が「変数」であったことに気づけます

 ここでの例では、お客さんからの声を頼りに、変数を見つけました。これに自分自身で気づくためには、シンプルな方法ですが、「なぜ?」を繰り返すことが大事です。

「なぜ、アポからお試しまでにこぎつけることができないのか?」
「なぜ、試用期間が終わってから契約につながっていないのか?」

 というように、仕事の工程を細かくして、心を鬼にして自分と向き合うことが試されます。「変数を見つける」という作業は、自分の行ないが間違っていたことを認める作業でもあるので、苦しさがあるかもしれません。

 しかし、ここで向き合える人には必ず成長が待っているので、それを信じましょう。さらに心を鬼にして数字と向き合う方法は、『数値化の鬼』という本にまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。20万部を突破した最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部のベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。