一方で気になる動きもある。水面下で協調しながら標的企業の株式を一気に買い進めるウルフパック戦術という投資手法だ。協調関係の有無を立証するのは難しく、関係者も頭を悩ませている。

 3月に任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィスが東洋建設の株式を大量取得した際には、当初素性が分からず株式市場が一時騒然となった。4月には仕手筋とも外国資本とも言われるリ・ジェネレーションがナガホリに対し市場内で株式を買い集め、買収防衛策の導入を決議する事態となった。2023年も法律の抜け穴を突いた仕手筋による中小株を狙った日本版ウルフパックが増えると予想される。

 司法判断に至ったのは、アダージキャピタルに対する三ッ星の買収防衛策だ。アダージとの争いは最高裁までもつれ込み、ポイズンピル(新株予約権の無償割当)の差し止め決定が最高裁で確定した。経営陣による過度な防衛策は認められなかった。

 例年同様に旧村上ファンド系の動向にも注目が集まった。旧村上系の提案を受け入れる形で、大豊建設とセントラル硝子が400億〜500億円規模の自社株買いを実施、旧村上系が20%近い株式を保有するジャフコグループも年末から2023年1月末にかけて420億円の自社株買いを行った。建設株を売り抜けた旧村上系が次に狙うのは石油元売り業界。コスモエネルギーホールディングスの筆頭株主に躍り出た後も追加取得を進め、11月22日に提出した変更報告書によると19.81%まで買い増しており、要注目だ。