「異次元」の予算規模となれば
大増税が待つのは必然

 そして、もう一つ押さえておきたい点が、当然ながら、税金で大盤振る舞いをした後に待つのは大増税であるという事実だ。岸田政権が打ち出した少子化対策の「異次元」というのは、予算規模のことを必ずしも指さないのではないかと淡い期待をしていたが、ダメだった。予算規模が異次元に拡大するのは間違いがないようだ。

 日本銀行の分析(「国民負担率と経済成長」2000年)によれば、国民負担率(税負担+社会保障負担の対名目国内総生産〈GDP〉比)が1%上昇すると経済成長率は0.30%低下するという相関関係が見られる。

 また、第一生命経済研究所「国民負担率の上昇がマクロ経済に及ぼす影響(続編)」(05年)によれば、国民負担率1%ポイントの上昇に対し、家計貯蓄率が0.28%ポイント低下する負の相関関係にあるという。

 そして、日本人の潜在的国民負担率(将来世代の負担である財政赤字を含む)は22年度(見通し)で56.9%(対国民所得比)になっている。これは、福祉国家として知られる北欧のスウェーデンをも上回る値だ。政策目的と違う上記二つの論点のような効果を期待したバラマキについては、国益の観点から拒否しておいた方がよさそうだ。

出生率を分解すると見えてくる
少子化対策「真のポイント」とは

 さて、ここまできてようやく本題に移ろう。

 内閣府子ども・子育て本部がまとめた「我が国のこれまでの少子化対策について」に、注目したいデータがある。そして、同じデータが、内閣官房のこども政策の推進に係る有識者会議の資料「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会 における議論の状況について」(21年9月16日)が内閣府に提出されている。

 その二つの資料には、こう書いてある。

(1)合計特殊出生率は、有配偶率と有配偶者出生率に分解できる。

(2)50歳時の未婚割合は、1980年に男性2.60%、女性4.45%であったが、直近の2015年には男性23.37%、女性14.06%に上昇している。この傾向が続けば、いずれ、男性で3割近く、女性で2割近くになると推計されている。

(3)夫婦の完結出生児数は、1970年代から2002年まで2.2人前後で安定的に推移していたが、2005年から減少傾向となり、直近の2015年には過去最低である1.94人になった。

 そして、図が二つ提示してある。

 ちょっと難しい言葉が続いたが、これらが何を意味しているのかを簡単に言うと、ざっとこのようなイメージだ。