職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「自分の不安」を思い出そう
あなたは、初めて訪れた場所で、入り口や受付の場所がわからなくてウロウロしたことがないでしょうか?
もし約束の時間にギリギリなら、なおさら不安になりますよね。
そんなとき、すれ違う人に、「どちらか、お訪ねですか?」と声をかけてもらえると、本当にありがたいものです。
そういう、「自分が不安になったことのある経験」には、気づかいの壁を越えるチャンスが潜んでいます。
受付エリアで担当者を待っていると、「どうぞ、おかけになってお待ちください」と、通りすがりの社員さんに声をかけてもらえるような企業があります。
訪問者への「気づかい」が、組織風土になっているのがわかります。
そうやって声をかけられると嬉しいのに、逆の立場になると、
「まあ、言わなくてもわかるでしょ」
「誰か気づいた人が声をかけるでしょ」
と、決めつけてしまうから不思議なものです。
「さりげなく確認する」という態度で
お客さまには、「潜在客→見込み客→お客→顧客→得意客→贔屓客」という階段があります。目の前の来訪者は取引先であるだけでなく、自社商品・サービスを利用する潜在客かもしれません。
消費者として商品・サービスを選ぶとき、
「せっかくだから、いつもよくしてもらっている、あの会社を選ぼう」
と思うのが、人の常だと思うのです。
自分の心の壁を越えて、次のように声をかけてみてください。
「お話をうかがっていますか?」
「どちらをお訪ねですか?」
「お約束のあるお客さまですか?」
こうやって躊躇なく声をかけるときのコツは、「いいことをしてやっている」という気持ちではなく、「相手の状況を知ろう」と、さりげなく確認する態度でいることです。
感謝されなくてもいいし、たとえおせっかいだったとしてもいいのです。
見返りを求めないのが重要です。
さらに1つ加えると、あなたが取引先を訪問した際に、「ご用件をうかがっていますか?」と声をかけられたら、「あ、大丈夫です」などと、サラッと断らないことです。
相手も、心の壁を越えて話しかけてくれたのです。
「はい、商品企画部の〇〇様をお待ちしているところです。ありがとうございます」と、感謝の言葉を伝えられると完璧です。
つい慌ててしまうような場面でも、余裕を持って返せるようになれると、とても素敵ですよね。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。