ヘビースモーカーのストレスの行き先が深刻化?
さて、このような記事を読んだヘビースモーカー社員の皆さんは、きっとかなりイライラしていることだろう。そうなると当然、一服をしたくなる。ただ、オフィスでは吸えないのでさらにイライラカリカリしてしまうだろう。
そんな時に、やることなすことイラっとするような「使えない部下」がミスをしたらどうか。八つ当たりではないが、かなり厳しく当たってしまうのではないか。虫の居所が悪ければ、「消えろ」「生きている価値がない」などひどい罵詈雑言を浴びせてしまうかもしれない。
実は筆者が考えている「ヘビースモーカー社員がもたらすリスク」の中でも最も深刻なことがこれだ。
ご存じの方も多いだろうが、よく言われる「たばこを吸うとスッキリする」というのは気のせいだ。喫煙者はニコチン依存症という状態なので、血中のニコチンが減るとイライラして禁断症状になる。それがたばこを吸うことで一気にニコチンが血液中に入ってニコチン切れのストレスが解消されているだけなのだ。
それはつまり、「全面禁煙のオフィスで働くヘビースモーカーは常にイライラしている」ということだ。もしそのような人が管理職にいれば当然、パワハラなどさまざまなトラブルが起きることは容易に想像できよう。それが自社のオフィスならばまだなんとか闇に葬り去ることもできるかもしれないが、飲食店や宿泊先、路上など公の場で、社外の人間に対して暴言を吐くなどのトラブルを起こしたら、会社にとっても大きなリスクではないか。
昨年、ある地方議員が、甲子園の観客席で加熱式たばこを吸って問題になった。注意をされても「はいはい」と言いながら吸い続けていた、というのでかなりのヘビースモーカーだ。
しかもこの地方議員、しばらくしたら今度はタクシーでトラブルを起こした。運転手に対して、「うち殺すぞ!」などと暴言を吐いて、助手席を蹴るなどしたという。世間から叩かれていた最中にこんな暴挙に出てしまうということは、ニコチン切れの状態に何かイライラすることが加わって自分が抑えられなかったのかもしれない。
もちろん、すべての喫煙者がこの地方議員のようなトラブルを起こすなどと言うつもりはない。が、一方で喫煙者は「ニコチン依存症」という心や行動に影響を与える「疾患」であることも事実だ。
喫煙社員が多い、特に管理職や経営者がヘビースモーカーだという会社は、この現実と向き合って、喫煙トラブルのリスクと真剣に向き合わなくてはいけない時代が来ているのではないか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)
6段落目:「宮城県高原町」→「宮崎県高原町」
(2023年2月9日15:45 ダイヤモンド編集部)