写真:JALPhoto:PIXTA

世界では、新型コロナウイルスとの共生が進み、移動の規制は、多くの国で撤廃され、航空利用者数もほぼコロナ前水準に回復している。後れを取る日本においても、回復の兆しが見えてきている。今後、JAL、ANAをはじめとする航空会社および空港は、コロナ危機から脱却し未来を描いていけるのか。行政の支援はどのように継続すべきなのか。事情に詳しい赤井伸郎・大阪大学国際公共政策研究科教授が、2回にわたり、ポイントを解説する。(大阪大学国際公共政策研究科長・同研究科教授 赤井伸郎)

世界の航空市場回復の一方で
停滞する日本の国際線の状況

 国際航空運送協会(IATA)の2022年12月の発表によれば、23年の航空旅客が22年比1割増の42億人になる見通しであり、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻り、さらに成長していくとされている。この背景には、コロナ禍でたまった旅行需要と、水際対策が多くの国で完全撤廃されていることがある。

 世界と見比べた場合、日本は特殊である。23年1月9日作成の国土交通省航空局資料によれば、日本の国内線旅客数は、旅行支援割の効果もあり、対コロナ前比で22年10月以降は90%程度まで戻ってきており、23年1月1日の数値では、109%にまで回復している。

 その一方で、国際線は、ビジネス客を中心に、コロナ前までの水準は回復できていない。23年1月9日作成の国土交通省航空局資料によれば、本邦航空会社10社の国際線の旅客数は、対コロナ前比で22年10月の30%台から、22年末には、40%代後半まで回復してきているが、いまだ50%には到達しておらず、影響が続いている。

 この背景には、政府が、コロナウイルスに対する注意や、ワクチン接種の必要性を呼びかけ、新型コロナウイルスを意識した水際対策を(23年1月現在で)継続していることから、海外旅行や海外出張を控える動きが継続していること、またそれによる需要の停滞が、便数拡大の障害となり、国際線運賃が高止まりしていることも関係していると考えられる。

 また、23年1月現在、中国からの直行便への水際対策により、「春節(旧正月)が始まっても、全日本空輸と日本航空の中国路線の1月の予約数は新型コロナウイルスの感染拡大前の19年同月と比べて1割にとどまる」(23年1月22日「日本経済新聞」報道)とのことで、厳しい状態が続いている。