写真:羽田空港,ロビーPhoto:PIXTA

新しい経営手法として、ターミナルビルと空港運営を一括で民間が引き受ける「コンセッション」と呼ばれる手法を取り入れる空港が増加していた中でコロナ禍が到来し、空港各社は前代未聞の苦境に直面した。今後、国内線が回復し、コロナ危機からの回復を目指す空港に対し、行政の支援はどのように継続すればいいのだろうか。(大阪大学国際公共政策研究科長・同研究科教授 赤井伸郎)

>>『JALとANA、コロナ最悪期は脱したが「行政支援の継続」に必要なことは』から読む。

回復基調にある
空港コンセッション会社

 空港コンセッションとは、国土交通省航空局ホームページによれば、「滑走路等の基本施設と航空旅客ターミナルビルを一体的に経営することにより効率的な運営を行い、航空ネットワークの充実・強化や地域の活性化を図るもの」とされる。

 全国的に、空港コンセッションは広がりを見せている。詳細は、以下を参照。

 国管理空港に関して。
 http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk5_000008.html

 地方管理空港に関して。
 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk5_000023.html

 空港コンセッションは、一定期間の間、空港の運営を民間が担い(運営権のみを民間に設定)、その間の収益から算定されたコンセッション料を、空港を所有する国や地方自治体に支払うビジネスモデルである。

 コンセッションが導入される以前は、国や地方自治体が滑走路等の基本施設を、また、第三セクター等が旅客ターミナルビルを運営してきたが、それらを一体的に経営することで、民間のノウハウが発揮され、より収益が上がることを想定している。

 このような想定は、旅客移動が制限されるコロナ禍では、十分に発揮できていない。国土交通省航空局資料によれば、2021年度のコンセッション空港の収支は、いずれも赤字となり、厳しい状態となっている。国内線国際線とも、コロナ前水準を大きく下回ったことが原因である。

 契約により、通常の収支の変動リスクは、コンセッション空港会社が負うことになっている。コンセッション契約では、コンセッション会社に責任を負わせることで努力を促すという狙いがある。新千歳空港のターミナルビルの収支は、コロナ前には、大きな黒字となっていたこともあり、大きなビジネスチャンスとされ、民間側もリスクを受け入れるだけの価値があると判断した。

 しかしながら、コロナ禍は、移動制限により、想定を上回るリスクが生じた状態といえる。特に、コンセッションを開始した会社の将来計画における収益源は、外国からのインバウンド需要であり、水際制限は、その収益源を根本から取り去ることになったのである。この事態においては、公共性の高い空港サービスを持続可能にするため、政府の支援もやむを得ないという判断がなされた。