「飲むと逆効果」になる
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 さらに、たった一つの症状を抑えるために使う薬も、デメリットがある。特にお世話になることが多いであろう「解熱剤」について取り上げよう。

 そもそも風邪をひくとなぜ熱が出るのか。市販薬に詳しい薬剤師の堀美智子氏(医薬情報研究所/エス・アイ・シー)にメカニズムを聞いた。

「体内の細胞はウイルスによって攻撃を受けると、細胞膜からアラキドン酸という物質が切り出されます。アラキドン酸はプロスタグランジンという物質を作り出し、これが炎症反応を起こし、脳に“熱を上げなさい”という指示を出すんですね。

 人間の脳には体温の調節をする機能があり、普段は平熱に保つように働いていますが、プロスタグランジンによって指示を受けると、体は筋肉を震わせて熱を生み出し、熱が体外に逃げるのを抑えるため皮膚の血管が縮みます。風邪をひいたときに悪寒がしたりブルブル震えたりするのはこのためです。この生み出された熱によって体の免疫活動は活発化し、ウイルスを排除することができるのです」

 つまりは風邪を治すには体温が高いほうが良い。堀氏が「葛根湯」を例に挙げる。

「よく風邪のひき始めには葛根湯を飲みなさいと言うでしょう。葛根湯の成分には葛根、麻黄、ショウガ、桂皮などが入っています。これらは全て体を温める効果があるもの。ですから風邪のひき始めに葛根湯を飲むと、体も熱を上げようとしているタイミングですから、そのサポートになります」

 だがウイルスが体内から排除されると、細胞膜からアラキドン酸が切り出されなくなり、脳へ体温を上げる指示も出なくなる。縮まっていた皮膚の血管が開き、汗を出して気化熱によって体内の熱を平熱に下げていく。この汗が出ているとき、つまり体が熱を下げようとしているときに「葛根湯を飲むと逆効果」という。