心筋梗塞の発症リスクを
3.4倍に増加させるケースも

 多くの風邪薬にはプソイドエフェドリンのような鼻づまりの症状を緩和する成分や、これらのような交感神経を活発にさせる交感神経興奮成分が含まれる。そのため血管収縮作用が起こり、高血圧や心疾患を有する人は病状を悪化させるのだ。

 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs:解熱鎮痛成分)についてはこんな怖い報告もある。「Journal of Infectious Diseases」(米国感染症学会の学術誌)に掲載された研究論文で、NSAIDsを使用した人は、使用しなかった人と比べて心筋梗塞を発症するリスクが高まるという。特に、急性気道感染症を患っていてNSAIDsを服用すると、心筋梗塞の発症リスクを3.4倍に増加させる。

 東邦大学名誉教授で平成横浜病院の東丸貴信医師が説明する。

「NSAIDsは感染症の症状軽減によく使いますが、注意が必要です。細菌やウイルスに感染すると、心臓血管など全身に炎症が広がり、NSAIDsの服用でより血栓ができやすくなります。感染に体が抵抗して心拍数も上がり、尿中への塩分や水分の排泄量も減り、血圧がより上昇する可能性があります」

 これらの成分は国内の風邪薬でも普通に含まれる。薬箱の中に入っている添付文書を見れば「高血圧、糖尿病、心臓病、甲状腺機能障害、前立腺肥大、緑内障」を患う人は、「飲んではいけない」か「薬剤師に相談を」に該当するパターンが多いはずだ。

どんなにつらくても
「できる限り選択するべきでない薬」とは

 風邪の症状にはのどの痛みや発熱、頭痛、関節痛、鼻水、鼻づまり、せき、たんなどさまざまなものがあるが、一般的な風邪薬(総合感冒薬)には一つの薬に多用な症状を抑える成分が入っている。だから“良くない”のだ。あらゆる症状を抑えるために多用な成分を飲むことが副作用発生リスクを高める。

 どうしてもつらい症状を緩和したいとき、熱やのどの痛みなら解熱(消炎)鎮痛剤、せきなら去痰薬、鼻水なら鼻水止め薬、もしくは点鼻薬というように、自分が最もつらい症状のみ、それを重点的に抑える、単一の成分である薬を選ぶことが大切である。実際に医療機関であれば、風邪に対してはそのように症状別に対症療法薬を処方している。

 読者には、本来風邪には薬が必要ないケースが多いこと、つらい症状を緩和するために薬を服用するときも「総合感冒薬」という複数の有効成分を組み合わせた「配合剤」は、できる限り選択するべきではないことを理解してほしい。