3回来てくれるお馴染みさんをつくる

 ある有名デザイナーさんが出演していたテレビ番組で「あなたにとってプロフェッショナルの定義はなんですか?」と質問された際、しばし考えたのち「仕事がまた来ることです」と答えていました。「仕事がまた来る人がプロ」。シンプルなお答えですが、納得。まさにこれ。

 サービス業の仕事には「継続的な仕事」と「1回限りの仕事」があります。会計事務所の行う決算書作成などは最もわかりやすい「継続的な仕事」です。顧問契約という名のサブスクリプション契約を結べば自動更新されて毎月収入が入ります。

 これに対してコンサルティングや講師、また書籍の執筆などはスポットで契約する「1回限りの仕事」です。ほとんどの商売人は「継続的な仕事」を好みます。なぜなら毎月決まった収入が入ってくるからです。その仕事が好きならそれで問題ありません。しかし私は決算書作成などの会計業務になじめず、コンサルや講師、書籍執筆方面の仕事がしたかったので「1回限りの仕事」を選びました。

「1回限りの仕事」は最初が勝負。スタート時は何が何でも仕事をとって、その仕事を成功させること。それによって「あいつに任せてみよう」となれば向こうから指名が来るようになります。重要なのは「3回仕事が来る」ように心がけること。最初の1回は単なる偶然かもしれません。2回目はもしかしたら運かもしれません。しかし、3回目の依頼が来たら、それは自分の実力と考えていいです。「3回仕事が来るようにする」これが商売の基本です。

書影『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)
田中靖浩 著

 江戸時代の昔、「1回目は一見さん、2回目で裏を返す、3回目でお馴染みさん」という言葉が遊郭などで使われました。ここでも「3回」来てもらいなさいとの教えがあったわけです。この“格言”は21世紀のいまも生きています。ネットショップでもホテルでも美容室でも、1回から2回、そして3回とリピートが減るものの「3回来てくれたお客さんは4回目も来てくれる」事実がデータから明らかになっています。江戸も現代も、C to BもC to Cも、コミュニティ・メーカーも美容師も、とにかく「3回来てくれるお馴染みさん」づくりを考えましょう。

 3回来てくれるリピーターづくりに必要な力のことを、私は「巻き込み力」と呼んでいます。既存の商品・サービスの魅力を高めるだけでなく、次々と新しい商品・サービスを産み出す展開力がないとお客さんを巻き込むことができません。これからの商売は「巻き込み力」が勝負を決めます。