どんな企業でも自社のプロダクトに対する思い入れがあるため、他社のプロダクトとの大きな差異を感じているのかもしれませんが、一般の人にはそれがわかりません。社内での評価とお客さまの評価が乖離していることもあります。自社のプロダクトが売れていないとしたら、単純に、そのプロダクトの便益と独自性の提案に価値を感じている人が少ないということです。

 潜在的なお客さまに価値を届けられていない、他社商品に比べて便益や独自性がないという問題を回避するためには、ここでも「どう売ったらいいか(HOW)」よりも、「誰に(WHO)、何を(WHAT)提案すれば価値を見いだしてもらえるか」の組み合わせを考えることに尽きます。お客さまがどんな便益と独自性を見いだしているかを洞察して、その関係を広げていくことからはじめるのです。

「とりあえずSNSで話題づくり」が
うまくいかない理由

 マーケティングで「価値づくり」としてやるべきことは、お客さまのニーズを洞察し、お客さまが便益と独自性を見いだすプロダクトやサービスを生みだすことです。さらに、その価値を高め続けて継続的な収益を生みだし、その収益から新たな価値をつくりだすために再投資していきます。

 しかし、マーケティング担当者や経営者の中には「どうしたら売上や利益が伸びるか」という方法論(HOW)ばかりを求めていて、「お客さまが誰なのか(WHO)」を理解しようとしていないケースが多いです。私がこれまで200社以上の経営の相談を受けた経験からも、本当にお客さまの立場に立ってその価値観やニーズを深く汲み取り、事業を進めようとしている企業は少なかったです。

 その反対に、多いのは「○○のような面白いCMをつくってください」とか「とりあえずSNSで話題をつくってほしい」といった相談です。「お客さま(WHO)」と「見いだした価値(WHAT)」がしっかり把握できていれば、HOWを導くことは難しくありません。しかし、HOWから入ると、本来届けるべきお客さまは目に入りません。

 とりあえずTikTokで話題づくりをしても、届けるべきお客さまがTikTokを見ていなかったら効果がないのは当然です。まずはWHOとWHATを考えたうえで、それに見合ったHOWを決めていきます。