「不人気だが必要」な政策を断行しても
政敵は何もできない
だが、安倍政権が支持率に敏感に対応し、国政選挙に連勝を重ねたことで野党は弱体化した。自民党は小選挙区制ながら、衆参両院で圧倒的多数を確保している。現在の自民党は、中選挙区制の時代以上に「一党優位」の状況だといっても過言ではない、
その状況下で、岸田首相という「古さ」を感じさせる首相が現れた。支持率低下に動じない「古い自民党」の価値観を持つ彼が、政権交代の危機感がない「一党優位」の状況下で政権運営を行うとどうなるか。
防衛増税のように「不人気だが必要」といえる政策を断行し、さらに支持率が低下したとしても、自民党の優位は揺るがない。政敵は支持率低下に付け込めず、手の出しようがないのだ。
岸田首相はただでさえ、解散権を行使しなければ3年間にわたって国政選挙がない「黄金の3年間」を手にしている。まさしく政敵は何もできない状況だ。
なお、今国会で審議が予定される課題は、防衛増税に加えて以下の3つである。
・原発の60年超の運転を可能にする新規制制度を盛り込んだ「原子炉等規制法(炉規法)の改正案」
・不法残留する外国人の迅速な送還や、入管施設での長期収容の解消を目的とした「入管難民法の改正案」
・相対的に所得の高い75歳以上の医療保険料を24年度から段階的に引き上げることが柱の「健康保険法等の改正案」
いずれも、まるで「55年体制」を思い出させる、与野党が完全に激突するような政治課題だ。声の大きな野党の反対で、内閣支持率のさらなる低下が懸念される。
だが、それゆえに、岸田首相の「古い政治家」としての持ち味が発揮されるかもしれない。岸田首相が支持率の推移に一喜一憂せず、淡々と「不人気だが必要」な法案を可決していく可能性は大いにある。
そのとき、政敵は何ができるのだろうか。
通常国会の論戦が本格化していく中、「岸田内閣の支持率がさらに下がり、『岸田降ろし』が始まる」という一般的な論調とは別の見方をしてみると、政局を見通す上での幅が広がるはずだ。