学校の「見て見ぬふり」や
「隠蔽工作」に生徒は絶望

 こうして文字にしてみると、いずれも学校ではありがちな事例ではあるが「~罪」と言われれば「なるほど。いじめなんて言葉では片付けられない明らかな犯罪だな」とご理解していただけると思う。

 いじめ防止対策推進法23条6項は「学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるとき(中略)在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない」と定めている。

 しかし同法制定後も、こうした被害に苦しんだ児童生徒の自殺は後を絶たなかった。

 なぜか。

 学校がSOSのサインをキャッチしても、見て見ぬふりをしてきたからだ。

 それどころか、自殺で事案が発覚した後も、学校や教育委は口裏合わせなど隠蔽(いんぺい)工作に走った。児童生徒やご遺族の絶望感はいかばかりだっただろう。

 それでは前述した、筆者が記事にした4つのケースは、具体的にどのような犯罪行為と言えるだろうか。

 旭川のケースは市の調査委員会の報告によると(1)性的な意味で被害生徒の体を触った、(2)お菓子などの代金を負担させた、(3)性的な動画の送信を繰り返し求めた、(4)脅して性的な行為を要求した――などが認定された。

 このうち、(1)は強制わいせつ罪、(2)は恐喝罪、(3)は児童ポルノ禁止法違反罪、(4)は同法違反罪か強要罪のいずれかに該当する可能性がある。実際に旭川中央署が(3)と(4)について同法違反罪に抵触すると判断したが、主犯は当時14歳で刑事責任を問えず「触法少年」として厳重注意にとどまった。ほかも証拠不十分で罪には問えなかった。

 神戸のケースは市の調査委員会の報告によると(1)悪口や無視、からかい、(2)廊下で足を引っかける――などが認定された。(1)は名誉毀損罪、(2)は暴行罪に該当する可能性がある。

 大津のケースは損害賠償請求訴訟の大津地裁判決によると(1)殴ったり蹴ったりした、(2)ハチの死骸を食べさせようと口の上に乗せた、(3)財布や時計を盗んだ――などが認定された。いわずもがなだが(1)(2)は暴行罪、(3)は窃盗罪が成立するだろう。実際に遺族は大津署に暴行、恐喝、強要、窃盗、脅迫、器物損壊の6つの罪で告訴状を提出、受理されている。

 鹿児島のケースは県の調査委員会の報告によると、履物を隠す(窃盗罪)などの行為もあったが、主に心理的苦痛を与える「分かりにくいいじめ」があったと指摘した。

 いずれも「犯罪行為」であり、それ以外にもいわゆる陰湿な「いじめ」と呼ぶ行為は、多数確認されている。